広報 あぐい
2008.09.01
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アブラカタブラ

〜みんなの童話〜

 

 まあちゃんは、ラーメンが だいすき。ツルツルっと、ラーメンを たべていたとき、いいことを おもいついた。
 「ラーメンに、まほうを かけよう、どんどん ふえるように」
 じっと ラーメンを みつめながら、テレビでみたり、ほんでよんだりした じゅもんを、ちいさなこえで つぶやいた。
 「アブラカタブラ チチンプイプイマハラタマハラハ」
 「まあちゃん、なに ぶつぶつ いってるの?ラーメン のびちゃうわよ」
 「いいの。いま だいじなところ なんだから」
 (ママには、わたしのたのしみとしょくよくがわかんないね)と、こころのなかで つぶやくと、どんぶりをもって にわにでた。
 「さあ、もういちどいくわよ。でてらっしゃい でてらっしゃい、わたしのラーメン。ふえろ ふえろ、わたしの ラーメン。
アブラカタブラ チチンプイプイマハラタマハラハ。アブラカタブラ……」
 なんかい くりかえしただろう。きがつくと、いいにおいに さそわれて、きんじょの いぬのシバちゃんや、ねこのタマ、カラスに へびのおやこ、おおきなかえるに ちいさなねずみが、あつまってきていた。
 まあちゃんは、みんなが なかよくあつまってることに、ちょっとびっくりした。けれど、
 「あんたたちも ラーメンが たべたいのね。まってなさい」
 というと、どんぶりに むきなおり、もういちど きあいをいれて、じゅもんを となえた。
 「ア〜ブラカタブラ チチンプイプイ マハラタマハラハァ〜」
 プクリ
 いきなり スープが なみうった。そして、みるみるうちに ラーメンがふえだした。
 「うわっほーい。やったー。まほうのラーメンだ」
 まあちゃんは、てをたたいて おどりだした。どうぶつたちも いっしょになって、おおよろこび。
 みんなで、どんぶりの あちこちから あふれだした ラーメンを、なかよくたべた。
 ズルズル。
 ツルツル。
 パクパク。
 ムシャムシャ。
 チュルチュル。
 「あーおなかいっぱい ワン」
 「もう たべられない ニャー」
 「チュルチュル おいしかった チュー」
 「あたまのさきから しっぽまで、ラーメンになったニョロ」
 「クワァー、おいしいスープだった」
 「ケロケロ、いっぱい たべたケロー」
 「あーしあわせ。おいしかったわ。ごちそうさま」
 すると、あーら ふしぎ。とびだしていたラーメンが、シュルシュルと、どんぶりのなかにもどっていき、なんにも なかったかのように、からっぽに なった。

 まあちゃんは、そのごも ときどき ラーメンどんぶりをもってにわにでる。けれど、どうやら、にどと まほうは、かからないようだ。いつも のびのびになって、ふやけてふえたラーメンを たべている。
 ときどき、かおをみせる シバちゃんや タマや カラスたちも、ちょっぴり ざんねんそうだ。

しろやま会員  渡辺郁己



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