広報 あぐい
2009.03.01
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やったね、ばんざーい

〜みんなの童話〜

 

 またやっちゃったー
 なまあたたかくて、じとっとしたあのかんじがしたら、もうておくれ。ぼくは、きょうも、おねしょをしてしまいました。そうっと2かいからおりて、だいどころのお母さんのまえにいきました。
「あっ、また?」
「ごめんね」
「いいわ。出るものはしかたないもの。お天気がいいからほしとくね。早くきがえていらしゃい。かぜひくよ」
 お母さんは、なぜかぼくのおねしょをしかりません。
 4月には、1年生だというのにいつまでも……と、じぶんでもおもいます。
 いちど、そのことでお母さんとおいしゃさんにいきました。
 *ねるまえに水をのまない
 *トイレにいってからねる
 *ひるのあいだ、よくあそぶ
 おいしゃさんとぼくは、やくそくしました。やくそくは、ちゃんとまもっています。でも、なかなかおねしょがなおりません。
「こうくん、ちょっとおいで。おもしろいよ、きょうのおねしょ」
 ベランダから、お母さんのこえがきこえました。
「お母さん、大きな声で、おねしょっていわないで!」
「そう、そうだったわね。うふふ、ごめんごめん。でも、みてごらん、このかたち。なにかにみえるでしょ」
 ぼくは、はずかしいからおねしょのかたちなんかみたことない。
 お母さんがいうので、ほしてあるふとんをみました。
「あっ、パンダ!」
「ねっ、おふとんのもようと、こうくんのおねしょががったいして、パンダのかおになったのね」
 わらっているお母さんのかおをみて、ぼくはすこしげんきがでました。
「ねえ、こうくん、こんどからおねしょのかたちよくみてごらん。いろんなかたちがあるよ、きっと……。ふふふ」
 お母さんは、またわらいながら、シーツやパジャマをせんたくきの中にいれました。
 さむい日のあさは、やっぱりおねしょです。おねしょのかたちは、くまやぶた、パンダなど、だいたいどうぶつのかたちにみえました。でも、ぼくは、お母さんみたいにわらえません。
 なんとかして1年生になるまでにおねしょがなおりますように……と、ねるまえにおいのりすることにしました。
 3月も、のこりすくないあるあさ、
「お母さんきて! きょうのおねしょはいままでとちょっとちがうよ。ほらっ!」
 いそいでぼくのへやにきたお母さんは、
「まあ。ちょうちょ。はるなのねえ」
 と、いいました。
 その日のよる、ぼくのへやは、いつもとちがうかんじがしました。
「わあっ、あたらしいふとん。お母さん、ぼくのふとんかえてくれたの」
「そうよ。はるがきて、ちょうちょがとんだからね!」
 お母さんは、にこにこしました。
 あたらしいふとんは、たんぽぽの花がらです。
 ふんわりとあったかく、いいにおいがします。
 つぎのあさ、ぼくのふとんには、あの大きなパンダもちょうちょもいませんでした。
 やったね、ばんざーい
 やったね、もうすぐ1年生!

しろやまの会員  ふじいのぶこ



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