またやっちゃったー
なまあたたかくて、じとっとしたあのかんじがしたら、もうておくれ。ぼくは、きょうも、おねしょをしてしまいました。そうっと2かいからおりて、だいどころのお母さんのまえにいきました。
「あっ、また?」
「ごめんね」
「いいわ。出るものはしかたないもの。お天気がいいからほしとくね。早くきがえていらしゃい。かぜひくよ」
お母さんは、なぜかぼくのおねしょをしかりません。
4月には、1年生だというのにいつまでも……と、じぶんでもおもいます。
いちど、そのことでお母さんとおいしゃさんにいきました。
*ねるまえに水をのまない
*トイレにいってからねる
*ひるのあいだ、よくあそぶ
おいしゃさんとぼくは、やくそくしました。やくそくは、ちゃんとまもっています。でも、なかなかおねしょがなおりません。
「こうくん、ちょっとおいで。おもしろいよ、きょうのおねしょ」
ベランダから、お母さんのこえがきこえました。
「お母さん、大きな声で、おねしょっていわないで!」
「そう、そうだったわね。うふふ、ごめんごめん。でも、みてごらん、このかたち。なにかにみえるでしょ」
ぼくは、はずかしいからおねしょのかたちなんかみたことない。
お母さんがいうので、ほしてあるふとんをみました。
「あっ、パンダ!」
「ねっ、おふとんのもようと、こうくんのおねしょががったいして、パンダのかおになったのね」
わらっているお母さんのかおをみて、ぼくはすこしげんきがでました。
「ねえ、こうくん、こんどからおねしょのかたちよくみてごらん。いろんなかたちがあるよ、きっと……。ふふふ」
お母さんは、またわらいながら、シーツやパジャマをせんたくきの中にいれました。
さむい日のあさは、やっぱりおねしょです。おねしょのかたちは、くまやぶた、パンダなど、だいたいどうぶつのかたちにみえました。でも、ぼくは、お母さんみたいにわらえません。
なんとかして1年生になるまでにおねしょがなおりますように……と、ねるまえにおいのりすることにしました。
3月も、のこりすくないあるあさ、
「お母さんきて! きょうのおねしょはいままでとちょっとちがうよ。ほらっ!」
いそいでぼくのへやにきたお母さんは、
「まあ。ちょうちょ。はるなのねえ」
と、いいました。
その日のよる、ぼくのへやは、いつもとちがうかんじがしました。
「わあっ、あたらしいふとん。お母さん、ぼくのふとんかえてくれたの」
「そうよ。はるがきて、ちょうちょがとんだからね!」
お母さんは、にこにこしました。
あたらしいふとんは、たんぽぽの花がらです。
ふんわりとあったかく、いいにおいがします。
つぎのあさ、ぼくのふとんには、あの大きなパンダもちょうちょもいませんでした。
やったね、ばんざーい
やったね、もうすぐ1年生!
しろやまの会員 ふじいのぶこ |