広報 あぐい
2009.03.01
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あぐいぶらり旅 〜鉄道沿線を歩く(3)〜

シリーズ 阿久比を歩く 95

 



枯れ草の間から顔を出す
セイヨウタンポポ



目の前を通過する電車


坂部駅からさらに北上を続ける。今日は2月14日、世間ではバレンタインデー。私はこの日にあまりときめかなくなった。「こんな日に僕と2人で大丈夫?」。「えぇ。大丈夫です」。なんとなく友人に落ち着きがない。

昨日の雨も上がった。風は少し強いが、日差しは春の陽気。今の時期、例年ならもう少し寒い日が続いているはずだがとても暖かい。畑に植えられた梅の木にかわいらしく花が咲く。ほとんどのつぼみに色が付き、満開になる日も近い。

田んぼにハトが群れを成す。どのハトも同じ動きで、首を動かし、くちばしで土の中を突っつく。電車が通っても飛び立とうとしない。

「電車の音にも気付かないくらい、夢中でえさを探しているのかなあ」。私の問い掛けに、「冬の間に食べ物がなくて腹ペコなんですよ。“平和の象徴”のハトですから手を出せば寄って来ますよ」と友人が近づいた瞬間、ハトたちは一斉に空へ飛び上がる。ハトたちの邪魔をしてしまったようだ。

前方に西尾知多線が東西に伸びる。高架橋に差し掛かり、真っすぐ通り抜けできないので、進行方向右手に流れる阿久比川沿いに出る。

川の流れと逆方向に歩を進め、知多半島道路をくぐり、再び細い道を線路と平行に歩く。土手でセイヨウタンポポを見つける。枯れた雑草の間から茎が伸び、鮮やかな黄色い花が咲く。所々で春の息吹を感じる。

白沢駅近くで、南へ向かう黒いボディの電車とすれ違う。「あの電車きっとセントレア行きですよ」と友人が言うので「それは違うなあ」と私は返す。なぜなら名鉄河和線で南に向かう電車は、絶対にセントレアには行かないからだ。危うく友人の思いつきの言葉を信じるところだった。

鉄道の沿線を阿久比町の南から北の端までを歩く「ぶらり旅」もゴールが見えてきた。間もなく巽ケ丘駅。「今思ったんですが、線路はチョコレート色ですよね」。「君、かなりバレンタインデーを意識しているね。ここで終わりだから早く帰ったら」。「もうそんな年じゃないですよ(笑)」。目を合わせないで話す友人が気になった。



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