高速で南へ走る千切れ雲 南方浄土があるやもしれぬ |
岡本 育与 |
里芋の親子孫らをときはなし今年も孫つれ育てと植える |
竹内 久恵 |
うた詠むも生きてこの世に在る証明桜吹雪に戦友の死思ほゆ |
田中 太平 |
ひと言を言わぬばかりにひと言を言ひしばかりに糸のもつるる |
長坂吉余子 |
荒波が岩にぶつかり舞い上がる鈍色の空に冬の花咲く |
新美 功子 |
我が人生六十年を顧みて採点するなら何点だろう? |
橋立 智子 |
しでこぶし木蓮匂ふを眺むれば万象極楽思ふ老齢となり |
桃井 昌子 |
散り急ぐ桜の花びら掌に受けて玉砕の兄を暫し偲びぬ |
山口 昇 |
休む前ごくろうさまと足の裏第二の心臓やさしくほぐす |
山崎 淳子 |
しあわせと思う心に寒さなど忘れてしまう外は吹雪けど |
山本きさ子 |
もっこりと土持ち上げてじゃがいもの小さき芽のぞく春の気配に |
渡辺百合子 |
亡き母を偲べば瞼に浮かびくるたすきを掛けし丸き背中が |
佐野 雄造 |