広報 あぐい
2006.09.01
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鳥のお母さん

〜みんなの童話〜

 

あやちゃんが、学校の帰り道みんなと話しながら歩いてくると、ギャー、ギャー、なきながらなにかがとびたちました。

「えっ。あれはなんだ」

たんぼのあぜは、かれ草でいっぱいです。そこからかれ草によくにたちゃいろっぽい鳥が飛びたちました。おなかのほうは、白くみえました。

それからも、あやちゃんは、いねをかったあとのなにもないたんぼを歩いている鳥をみました。

日曜日の朝のことでした。

ギャー、ギャー、なきさわぐ声をききました。

(鳥がさわいでいる)

あやちゃんは、ベランダにでてみました。

空に鳥と、カラスがみえました。

「あれっ。あの鳥、この前さわいでとびたった鳥だ」

あやちゃんは、びっくりしました。

カラスの半分くらいのちゃいろっぽいちび鳥が、カラスをおいかけているのです。

ギャギャー、ギャギャー、なきながらカラスをおいかけていきます。

カラスは、大きな黒い羽をひろげて、ゆっくりゆっくりとんでいます。まるでちび鳥をからかっているようにもみえます。

カラスは、一言もなかないで、ふうわりふうわりとんでいます。

ちび鳥は、なきながらつきかかっていきます。つきかかっては、少しさがるとまたつきかかっていきます。

カラスは、にげるでもなくやねの上近くを、ふうわりふうわり、飛んでいます。

ちび鳥は、どこまでもたたかっていきます。

「カラスは、いったいなにをしたんだ。そんなにおわれるほど」

あやちゃんは、すごいたたかいをみていました。

「あれっ。カラスが上にあがった」

と、みえたらカラスがさーっと、高くあがってにげていきました。

おいかけていたちび鳥が、しずかになっておりていきました。

「お母さん、いますごいたたかいがあったよ」

あやちゃんは、お母さんに話しかけました。

お母さんは、のんびりテレビをみています。

「なにがあったの?」

「ちび鳥とカラスのせんそう」

「ふーん。カラスとたたかうとわね。ちび鳥はどんな鳥だった?」

「ちゃいろっぽい鳥だよ。いつも大きな声でギャーギャーなく鳥」

「ああ、あれねぇ。たんぼにいる鳥よね。人が近づくと大きな声でなく」

「それそれ。それでね、カラスの半分ぐらいの大きさなのにカラスに、かかっていくの。羽がちらちらおちてきたりして。それでもちび鳥は、何回も何回もたたかっていくの」

「すごいたたかいだったね。ちょうどいま子そだてのさいちゅうでね。たんぼのあぜのかれ草の中にすをつくり、たまごをうんでひなにかえすころなんだよ」

「なんていう名前の鳥?」

「タシギっていう鳥だと思うよ」

「タシギか。それにしてもよくたたかったよ」

「カラスがタシギのすをねらったのかもね」

「それであんなに、すごくたたかったんだね。鳥のお母さんって、つよいね」

「お母さんかどうか、お父さん鳥かもね。鳥にきいてみなけりゃわからない」

「いいや。あれはきっとお母さん鳥だよ。あんなになきさけんで子どもをまもるんだもん」

「ふーん。そうかねえ。お父さんもいざとなったら、がんばるよ」

「だって人間は、お母さんのほうがやかましいよ」

「ふーん。そんなものかねぇ」

お母さんは、わらいました。

それからのあやちゃんは、空をわたっている鳥、ないている鳥をみると、とてもしたしい生き物におもえてじーっとみるようになりました。

しろやま会員  かたやまのぶこ 



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