あやちゃんが、学校の帰り道みんなと話しながら歩いてくると、ギャー、ギャー、なきながらなにかがとびたちました。
「えっ。あれはなんだ」
たんぼのあぜは、かれ草でいっぱいです。そこからかれ草によくにたちゃいろっぽい鳥が飛びたちました。おなかのほうは、白くみえました。
それからも、あやちゃんは、いねをかったあとのなにもないたんぼを歩いている鳥をみました。
日曜日の朝のことでした。
ギャー、ギャー、なきさわぐ声をききました。
(鳥がさわいでいる)
あやちゃんは、ベランダにでてみました。
空に鳥と、カラスがみえました。
「あれっ。あの鳥、この前さわいでとびたった鳥だ」
あやちゃんは、びっくりしました。
カラスの半分くらいのちゃいろっぽいちび鳥が、カラスをおいかけているのです。
ギャギャー、ギャギャー、なきながらカラスをおいかけていきます。
カラスは、大きな黒い羽をひろげて、ゆっくりゆっくりとんでいます。まるでちび鳥をからかっているようにもみえます。
カラスは、一言もなかないで、ふうわりふうわりとんでいます。
ちび鳥は、なきながらつきかかっていきます。つきかかっては、少しさがるとまたつきかかっていきます。
カラスは、にげるでもなくやねの上近くを、ふうわりふうわり、飛んでいます。
ちび鳥は、どこまでもたたかっていきます。
「カラスは、いったいなにをしたんだ。そんなにおわれるほど」
あやちゃんは、すごいたたかいをみていました。
「あれっ。カラスが上にあがった」
と、みえたらカラスがさーっと、高くあがってにげていきました。
おいかけていたちび鳥が、しずかになっておりていきました。
「お母さん、いますごいたたかいがあったよ」
あやちゃんは、お母さんに話しかけました。
お母さんは、のんびりテレビをみています。
「なにがあったの?」
「ちび鳥とカラスのせんそう」
「ふーん。カラスとたたかうとわね。ちび鳥はどんな鳥だった?」
「ちゃいろっぽい鳥だよ。いつも大きな声でギャーギャーなく鳥」
「ああ、あれねぇ。たんぼにいる鳥よね。人が近づくと大きな声でなく」
「それそれ。それでね、カラスの半分ぐらいの大きさなのにカラスに、かかっていくの。羽がちらちらおちてきたりして。それでもちび鳥は、何回も何回もたたかっていくの」
「すごいたたかいだったね。ちょうどいま子そだてのさいちゅうでね。たんぼのあぜのかれ草の中にすをつくり、たまごをうんでひなにかえすころなんだよ」
「なんていう名前の鳥?」
「タシギっていう鳥だと思うよ」
「タシギか。それにしてもよくたたかったよ」
「カラスがタシギのすをねらったのかもね」
「それであんなに、すごくたたかったんだね。鳥のお母さんって、つよいね」
「お母さんかどうか、お父さん鳥かもね。鳥にきいてみなけりゃわからない」
「いいや。あれはきっとお母さん鳥だよ。あんなになきさけんで子どもをまもるんだもん」
「ふーん。そうかねえ。お父さんもいざとなったら、がんばるよ」
「だって人間は、お母さんのほうがやかましいよ」
「ふーん。そんなものかねぇ」
お母さんは、わらいました。
それからのあやちゃんは、空をわたっている鳥、ないている鳥をみると、とてもしたしい生き物におもえてじーっとみるようになりました。
しろやま会員 かたやまのぶこ |