広報 あぐい
2006.09.01
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あぐいぶらり旅 〜村絵図を歩く(坂部村編)〜

シリーズ 阿久比を歩く 35

 


坂部村絵図
(阿久比町誌資料編1村絵図解説書から)


城山公園で虫取りを楽しむ親子


「お塚さん」と呼ばれている観音像

今回は坂部村の村絵図を見ながらぶらり旅に出掛けた。

最初に「久松佐渡守古城跡」(城は徳川家康の生母於大の方の夫久松俊勝が築城)と記され、現在は城山公園となっている場所を訪れる。

盆を過ぎても暑い日が続く。セミの鳴き声がにぎやかだ。公園ではタモを持った親子が虫取りを楽しんでいる。幼い子が自慢げに捕まえたアブラゼミを手に持って見せてくれる。公園内にひっそりと建つ石碑が、城のあったことを物語っている。

次に洞雲院に向かう。境内を通り、於大の方の遺髪墓などが並ぶ久松・松平家葬地に着く。何度も訪れているが、いつ来てもこの一帯だけに木漏れ日の光が射し込む、幻想的な場所である。

洞雲院の裏山から道が、八幡神社へと続いていた。村絵図に記されている氏神がこの場所のようだ。背の高い木がうっそうと茂る、静かな森の中に神社がある。

拝殿前の広場はゲートボール場になっている。森の中であるせいか、陽があまり当たらず、夏にゲートボールを楽しむには最適な場所なのかもしれない。ここでもセミの鳴き声はにぎやかだ。

阿久比町誌村絵図解説書には、「阿ら畑」にある塚に月宮姫の墓、通称「お塚さん」と言われる観音像が安置され、祈ると美人になるとの伝説が残るとある。この「お塚さん」を探すことにした。

村絵図と現在の地図を見比べると、「阿ら畑」は現在の「東新畑」辺りではないかと考え、その周辺の畑を歩いた。

畑で仕事をする男性に「お塚さんと呼ばれている観音像を知りませんか」と、尋ねる。「これだよ」と、言われる。土が盛られて塚になっている前に高さ50cm程の石造。まさに探していたものが目の前にある。

偶然にも出会ったこの男性は、先代からこの観音像を世話していると話してくれた。「女性がこの観音像に祈ると美人になるそうですが」と聞くと、「そんな風に言われているみたいだね」と笑顔で答えてくれる。

「そういえば坂部地区の女性は美人が多いですよね」と友人がいつものように調子のいいことを口にする。

今回のぶらり旅では、残り少ない夏を惜しむかのようにセミの鳴き声がとてもにぎやかだった。最後に山之神を訪れたが、数えただけで10匹以上のアブラゼミが木に止まっていた。どこへ行ってもセミの声が聞こえるはずである。



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