広報 あぐい
2005.12.15
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あぐいぶらり旅 〜史跡を巡る(坂部城跡)〜

シリーズ 阿久比を歩く 18

 

今回から阿久比の史跡を巡ることにする。町立図書館隣にある坂部城跡(現在城山公園)を訪れた。

師走に入り、気温もぐっと下がり顔に当たる北風がとても冷たい。気が付くと背中が丸くなっている。そんな寒風が吹く中、城山公園入口から坂部城跡に続く細い坂道を登って行く。

坂道には、赤や黄に色付いた落葉樹の葉が落ち、風が吹くたびに舞い上がり、ころころとどんぐりが転がり落ちてくる。

徳川家康の生母於大の方は、家康を生んだ後、天文16年(1547)坂部城主久松俊勝と再婚し、織田家や今川家の人質となった幼い息子と離ればなれになる。桶狭間の戦いを控えた永禄3年(1560)家康は阿久比の地で暮らす母に会うため坂部城に立ち寄ったと言われる。

現在坂部城跡には、城が建っていたと思わせる形跡は何もなく、唯一「阿久比古城趾ノ碑」と記された石碑が公園隅にひっそりとある。しかし、今私たちが訪れ、立っているこの場所は戦国時代、生き残れるか分からない戦を控えて、徳川家康と母於大の方が再会を果たしたドラマチックな場所である。

図書館の本を借りてきた母と子が公園を通り抜けて私たちが登ってきた坂道を下っていく。いつの時代も母は子どものことを心配している。「走ると転ぶわよ」と母親は幼い子どもに声を掛ける。子どもはつまずいて転び泣きべそをかいている。親子は手をつないで歩き始めた。その後ろ姿をしばらく眺める。母の手の温もりを思い出し、一瞬寒さを忘れる。現実に戻ると木に1羽のカラスが止まり、口を開けて同じ方角を眺めていた。


◆拡大図はこちら◆
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城山公園入口



坂部城跡の石碑



坂部城跡から下る坂道



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