〈夏は、夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。……〉
(清少納言『枕草子』)
− 夏の闇夜はホタルが多く飛びかうのがいい。1つ2つわずかに光って飛ぶホタルも趣がある −
ホタルは古くから人々の生活になじみ、その淡い光で、人々の“心”を癒してきました。しかし、時代が進み、私たちの生活が豊かになるにつれ、ホタルが飛びかう姿を見る場所が減少していきました。
ホタルが生息するにはきれいな水環境が不可欠です。美しい自然にしか生息できないホタルは“環境のバロメーター”です。阿久比町では昭和58年から「ホタル飛びかう住みよい環境づくり」を目指し、町内に生息しているヘイケボタルの発生状況や生態などの調査研究を行っています。
今年はホタル保護啓発の新たな取り組みとして、町民こぞってホタルを見に行く期間「ホタルと一緒に自然を守らナイト」(6月20日〜7月10日)を設けました。ホタルを通して、家族で命や自然の大切さを見つめ直す機会にしていただけたでしょうか。
6月26日と27日の2日間、ふれあいの森ホタル養殖場で開いた「ほたる観察会」には約2,400人、6月24日に東部小学校で行われた「ホタル鑑賞会」には約700人の来場者がありました。観察会で「ホタルを見たことがないので見に来ました」という声を聞きました。ホタルの幻想的な淡い光は、多くの皆さんに感動を与えました。
ホタルの光を絶やさないためにも普段からの行動が必要です。ゴミを拾う、ゴミのポイ捨てをしない、川を汚さないなど…。小さなことですが、続けて行けば地球環境を守ることにつながります。
2010年には、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開催されます。会議では、地球上の多様な生き物を守るための方法などが話し合われます。阿久比町が取り組んでいる活動を、機会あるごとに紹介していきたいと考えています。
『枕草子』の一説にもあるように、夏の夜には欠かすことのできない「ホタル」。まち全体で保護活動に取り組み、自然と人間の共存のシンボルである“ホタル”をこれからも見守り続けていきます。 |