広報 あぐい
2009.08.01
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(板山・福住・白沢コース 6)〜

シリーズ 阿久比を歩く 105

 



通称“抱き地蔵”と呼ばれる「峠地蔵尊」



宝安寺西側に安置される「地蔵尊」


白沢地区宝安寺の「地蔵尊」と峠の「地蔵尊」を探しに出掛けた。

子どもたちは夏休みに入ったが、「梅雨明け宣言」はまだない。今日もはっきりしない天気。どんよりとした曇り空で蒸し暑い。

宝安寺を訪ねると、本堂を建て直し中で、境内は「トントントン」と勢いのある金づちの音が響く。西側にそろいの赤い前掛けをした10体の石造が並ぶ。その中に「地蔵尊」が交じる。

文化財調査報告によれば、「地蔵尊」には、〈右 半田 もろざき〉、〈左 ありわけ 亀ざき〉と記され、道路改修の際に宝安寺境内に集められたもので、元の安置場所は不明。

地蔵の両脇には道を示す文字が読み取れる。道ばたに置かれた地蔵尊を“辻地蔵”と呼び、道しるべの役割を果たす。優しい顔の表情が印象的だ。道先案内役を終えた安堵感だろうか、静かに世の中を眺める。

宝安寺を後にして、峠の「地蔵尊」を目指す。別れ道の一角の小さな堂に「地蔵尊」がまつられる。民家を訪ねて地蔵尊にまつわる話を聞く。

その昔、峠に休憩する茶屋があり、その場所に“辻地蔵”として置かれていた。時代が流れ、道しるべとしての役割を果たさなくなると地蔵はないがしろにされる。地元で不幸なことが続いたときに、刈谷市へ嫁いだおばあさんから「草むらで眠る『お地蔵さん』を大事にしたらどうだろう」と助言を受ける。堂の中に安置して、みんなが手を合わせるようになってから、不幸が不思議と起こらなくなったという。

現在は近くに住む7件の家が順番で地蔵尊の世話をする。8月と2月の年に2回“地蔵祭り”を開き、祭り当日には団子やお菓子を供えて、お年寄りや子どもたちが念仏を唱える。

地元の人は、通称“抱き地蔵”とも呼ぶ。願いごとをするときに地蔵を抱き、「軽い」と思った場合には願いごとがかなうらしい。

「子どもが病気をしたときは『お地蔵さん』を抱かせます。不思議と治るんですよ」と女性が笑顔で話す。

今まで不思議そうに話を聞いていた友人に「君もお地蔵さん抱かせてもらえば」と私が言うと、「もし願いごとをして重かったら、怖いのでやめときます。科学では証明できないことが本当にあるんですね」と首をかしげる。梅雨明けはまだだろうか。雨が降り出してきた。



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