陰謀の渦巻く古代史消すほどに美しきかな春の海原 |
岡本 育与 |
街灯の明かり円くにじませて降る雨白く塀にしたたる |
勝 暁子 |
我が家より見ゆる大きな溜池にカイツブリひと日巣作り励む |
竹内 清己 |
夕暮て未だ帰らぬ孫の如安否気づかう軒のつばくろ |
大村寿美子 |
あばら骨三本足りぬ房州者温暖さゆゑか偉人出ずとふ |
奥田 貞子 |
手動ドア椅子は固くて良いのですそれが古里へと続く列車なら |
加藤かずみ |
おちょぼ口の物言いたげな紙びなは宅老帰りに我が家に来たる |
竹内 久恵 |
亡妻の魂来ても遊べよ五月陽のてらてら照らふこの芝庭に |
田中 太平 |
愚痴言わずうつつの流れに添ひて日々勤めし媼召されて逝きたり |
長坂吉余子 |
「元気でね」又会う日までと駅で別れ一人家路に思い出運ぶ |
新美 功子 |
考えた一生懸命考えた我が脳味は潤い足らず |
橋立 智子 |
また一つ歳を重ねて振り向けば山や谷あり今が有りなん |
木村 久世 |