県道東浦阿久比線(469号線)から福山川沿いの町道へぶらり旅に出掛けた。
梅雨も明け、太陽の日差しがまぶしい。夏を待ちかねたようにセミの声が「シャカ、シャカ」鳴り響く。東浦町との境から今日も張り切ってスタートを切る。
空にはもくもくと入道雲。暑さのせいか雲がソフトクリームに見えてくる。暑い中、いい年した男2人が歩いているので、通り過ぎていく車の運転手たちは、物珍しそうにこちらを眺めていく。
西尾知多線を横切り、町道に入る。福山川沿いを歩く。脱水症状を起こすといけないので、熊野神社で水分補給をすることにした。石橋を渡るとクスノキが参道に生い茂り、木陰をつくる。一歩足を踏み入れると、ひんやりと涼しい。汗が「さー」と引く。神社境内に入ると、再び太陽が照りつけ、めまいさえ感じる暑さが私たちを襲う。ジュースを飲んでのどを潤し、しばらく休息を取る。今日は友人がとぼけたことを言わない。ぐったりと黙っている。
2人とも黙ったまま目を合わせ、うなずいた後、先を急いだ。西へ向かう。知多四国八十八カ所の札所である安楽寺と興昌寺を通り過ぎる。福山川の堤にヒマワリの花が咲く。夏といえばヒマワリ。私たちと比べものにならないほど元気がいい。
福住新橋を渡り、英比小学校がある方へと進む。友人が「この先にメロディ橋がありますよ」と言う。「へえ。それなあに」と尋ねる。「橋の欄干に鉄琴が埋め込んであって、たたくとメロディになるんですよ」。「おもしろそうだね。行ってみようか」。
友人の記憶は確かだった。「英比音橋」が存在した。橋の欄干に童謡ばし「赤とんぼ」、「お馬」の楽譜のプレートと音符がデザインされた鉄琴が作られていた。
「これこれ。小学生のとき、ここにあった“ばち”でよく音を鳴らしましたよ。懐かしいなあ」。友人は指のつめ先で鉄琴をたたきながら「♪夕焼小焼の赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か♪」と口ずさんでいる。作曲した山田耕筰さんもびっくりするに違いない、見事に音程の外れた音痴な歌声であった。
その後も、メロディが頭から離れず、童謡を2人で熱唱しながら平野橋まで歩いた。「♪ぽっくり ぽっくり歩く♪」。 |