菩提寺へメールを送れど返事来ぬあの世はやはり遠きが宜し |
岡本 育与 |
物の無き戦時を偲び豊作の「キャベツ」を捨てる時代を哀しむ |
山口 昇 |
都市に住む婿の実家に野菜送るも礼の電話に料金案ず |
山崎 淳子 |
もくもくと集団下校する児らは道草といふ言葉を知らず |
山本きさ子 |
新たまの年に集いしはらからと昔を語り母を語りぬ |
渡辺百合子 |
すっきりと晴れたる師走の月曜日笑顔で児らはバスに乗りゆく |
奥田 貞子 |
国敗れ六十二年経ちし今年 年賀くれし戦友一人となりぬ |
佐野 雄造 |
西空をおおえる雲のカーテンは夕日透かせてクリスタル模様 |
勝 暁子 |
暮れなずむ池面の隅に鷺一羽佇む見えて年の瀬迫る |
竹内 清己 |
個展にて「九十の母」とかかげあり嫁の描きて吾の笑えり |
大村寿美子 |
晩秋に取り残されしピーマン達やけ酒のみしか真っ赤になりぬ |
加藤かずみ |
帰省して古いアルバム紐解けば我に似し母そこに居りたり |
木村 久世 |