広報 あぐい
2006.07.01
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うれしいおうえん

〜みんなの童話〜

 

夏休み前の今日は、6年生の水泳大会がある日だ。

私はゆううつな気持ちで教室にいると、友だちのいくよが話しかけてきた。

「なみこ、水着を持ってきた?」

「持ってこなかった。いくよは持ってきた?」

「泳げないから、持ってきてない」

「選手の子が休んでいて、水着を持っていると、水泳大会に出場させられるかもしれないからね」

「選手の子が、休んでいなければいいけど」

「選手以外は全員補欠だなんて、だれかが持ってきてるよ」

いくよと話していると、私の気持ちが楽になってきた。

担任の先生が教室に入ってきて、全員に話しだした。

「これから水泳大会だが、出場する子もしない子も、しっかりおうえんするように」

「はーい」

「ところで、補欠の子で水着を持ってきた子は手を上げてください」

補欠の子は泳げない子がほとんどだから、だれも手を上げなかった。

そんなとき、私のおかあさんが、入り口の前に立っていた。急いでおかあさんの所にかけよった。

「何しに来たの」

「げんかんに水着が置いてあったから、届けに来たのよ。水泳がんばりなさい」

おかあさんは、私に水着をわたすと、先生にえしゃくをして帰っていった。

先生が話してきた。

「なみこちゃん、水泳大会に出てくれないか。選手の子がおなかが痛くなったと、言ってきたんだよ」

突然の話に、泣きそうになった。

「私は、息つぎができません。だから10メートルぐらいしか泳げないんです」

「だれも水着を持ってきていないから出てほしいんだ。泳げるところまで泳いであとは歩いてもいいから、最後までがんばってみよう」

私はその言葉に少し安心して大会に出る決心をした。

いよいよ水泳大会が始まった。

どんどん競技が進むと、私のしんぞうの音が早く打ち始めた。

順番が回ってきた。

プールサイドに立つと、クラスみんなのおうえんしている声が聞こえてくる。

「水の中からスタートしてもいいんだからね」

「なみこ、泳げるところまでがんばれよ」

「なみこ、ファイト」

「最後まで、歩いてもいいからね」

みんなの声を聞きながら、飛び込みのできない私は水の中で合図を待った。

「よーい、スタート」

みんな一斉に飛び込む。

私も水の中に顔をつけた。

かべを力いっぱいける。

息を止め、手と足を動かし続けた。

「がんばれ!なみこ」

「すごい!早いぞ」

「1番でゴールだ!」

息が切れそうになり、水から顔を出した。

クラスのみんなから、ため息やどなる声が聞こえてきた。

「あと少しだったのに」

「そこで立つな!」

「早く泳げ!」

いくよの叫ぶ声も聞こえてきた。

「仕方がないでしょ、なみこは息つぎができないんだから、おこらないで、おうえんしなさいよ」

私は大きく息を吸い込み、また水の中に入っていった。

ゴールをした。

最後に顔を上げていた。

おうえん席に戻ると、みんなが大きな拍手で迎えてくれた。

いくよが話してきた。

「あと少しで、1番のゴールだったのに、ざんねんだったね」

「私が1番?」

「15メートルのところで立ち上がったでしょう」

「うん、苦しくなったから」

「そこまでは早かったんだよ」

「え?ほんと!」

「このままだと1番でゴールだって、みんなが大さわぎしてたんだ」

私はうれしくなってきた。

「よし、今年は息つぎが出来るよう、がんばって練習してみよう!」

しろやま会員  杉本ゆみこ 



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