広報あぐい

2011.07.01


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あま蛙の兄弟

〜みんなの童話〜

 さっちゃんの家の庭に、あじさいの花が咲きました。赤と白とむらさきの、まんまるく、ボールみたいです。お日さまの方を見て、うれしそうに、咲いています。さっちゃんが、お花を見ていると、葉っぱのうらに、二ひきのあまがえるが、かくれていました。
「かえるさん、かくれんぼしているの」
 さっちゃんの声に、すこし大きいかえるは、かくれてしまいましたが、小さいかえるは、さっちゃんを見て、
「そうだ……あの時、ぼくたちをつかまえて、ここへつれて来た、おねえちゃんだったね」
 さっちゃんは、小さくうなずくと、かえるをさっちゃんの、手の平にのせました。そのとき、
 お兄ちゃんかえるも出てきて、さっちゃんの手の平に、弟かえると並んで、のりました。
 さっちゃんは、かわいい二匹に名前をつけました。大きいかえるは「たあくん」小さいかえるは、「あまちゃん」
 たあくんと、あまちゃんは、まい日、あじさいの花のかげであそんでいます。でも、ときどき、さみしそうにして、さっちゃんのママを見ているのです。
 さっちゃんは思いました。保育園の帰り道で、たあくんと、あまちゃんだけをつれてきたが、兄弟かえるの、おかあさんのことを、思ったことも、なかったのです。
 たあくんも、あまちゃんも、さみしいだろうと思いました。それでさっちゃんは、私が、あまちゃんたちの、ママになってあげようと思いました。
「あまちゃん、ママがあそんであげるから」
 さっちゃんが手を出すと、あまちゃんが、さっちゃんの手にのりました。それからが大変なことになるのです。

 さっちゃんは、バケツの中に水を一ぱい入れて、あまちゃんの足を一ぱい広げて、バケツの水につけて、
「スイミングですよ。かえるなのに、かえる泳ぎもできないの」
 さっちゃんは春から、スイミングに、かよっているのですが、いやなんです。それをあまちゃんに、ぶつけているようです。
 だからあまちゃんは、さっちゃんに、見つからないように、かくれて、にげています。
 さっちゃんは、毎日ほいくえんの帰り道、たあくんと、あまちゃんがいた道で、
「あまちゃんのおかあさん、いませんか」と、さがしながら、かえりました。草の中までさがしています。

「たあくん、あまちゃん、ママの所へおかえり」さっちゃんは、さみしいが、たあくんと、あまちゃんをつれて、あじさいの赤い花の枝を一本持って、前にいた田んぼの所へ返しました。
「どうかおかあさんにあえますように」と神さまにお祈りしました。
 さっちゃんは、たあくんと、あまちゃんが、いなくなってから、さみしくて、さみしくてたまりません。お庭には今も、あじさいの花は咲いています。
 何日か過ぎたある日のこと、『ケロケロケロ』と、大合唱が聞こえてきました。少し雨がふる中からです。庭のあじさいの木の下に、数えきれないほど、あまがえるが集まって、合唱をしていました。さっちゃんも、あわてて、家に入ると、ピアノをたたいて、かえるの歌をうたいました。


  かえるのうたが
   聞こえてくるよ
    ケロケロケロケロ
      クワクワカア

 きっと兄弟かえるは、おかあさんに、あえたでしょう。
 あまちゃんや、たあくんや、さっちゃんの大合唱が、いつまでもつづきました。

しろやま会員  中川かなめ