広報 あぐい
2008.11.01
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えらい、えらい、じいちゃん

〜みんなの童話〜

 

 サチは大好きなじいちゃんと、今日はドライブです。初めての道ばかりで楽しく、うきうきでした。
「じいちゃん、どこへ行くの」
「それは行ってからのおたのしみ」
 サチは胸がわくわくしてきました。途中のコンビニで、おにぎりと、ジュースを買ってもらい、ルンルン気分です。じいちゃんは、山の下の道に車を止めました。
「じいちゃん、ここはどこ?」
「ここは常滑(とこなめ)でな、この山はおんたけさんだよ、少しのぼるとお堂があるよ」
 サチは、とこなめと聞いてセントレアを思いました。
「この山をのぼるの?」
「この山をのぼると、サチのびっくりするような、ものが見えるよ」
 サチは山の上に何があるのか、楽しみでした。じいちゃんは、何か得意そうな顔で、
「これからは少し坂道だから、気をつけて歩きなさい」
 サチは山道を歩くのが、初めてなので、足に力を入れて歩きました。
 道の両側には大きな木があり、少し涼しく、木の葉は秋の色でした。
 でも、じいちゃんの言った、びっくりするほどの物は、どこにも見えません。まわりは大きな木ばかりです。びっくりするほどの物を、早く見たいです。
「じいちゃん、この木なんの木?」
「この木は桜の木じゃ、春には美しい花のトンネルだな」
「来年の春、わたし1年生になって、花のトンネル通りたい」
 サチは来年の春が楽しみです。じいちゃんも、
「そうだな、サチと花のトンネルを、通ると楽しいな」、桜の木を見上げて言いました。
 山道を少し歩くと、汗が出てきました。じいちゃんは一歩、歩くたびに「ああえらい、えらい」と言います。少し歩くとまた「えらい、えらい」と言います。サチは何がそんなに、えらいのかと思いました。
 途中から石段がありました。その石段を上がると、展望台が見えました。「展望台だ」
 サチはじいちゃんを追いこして、走りました。「うわ―すごい海」
  展望台からは、広い海が見えました。じいちゃんは、得意そうに、指さして、「サチ海、見えたか、セントレアだよ」
 サチもびっくりです。大きな島が、海の真ん中にありました。セントレアは、パパと車で行く所だと思っていました。
「あっ……飛行機が大きく見える。今から飛ぶよ、どこへ行くのかな」
 海の向こうからも飛行機が帰って来ました。海を見つめていたじいちゃんが、ポケットからハーモニカをとり出して、吹き始めました。
♪…うーみーはひろいなー
   おーきいなー つーきがの ぼるしー ひがしーずーむ
 サチは、ハーモニカに合わせて歌いました。ばあちゃんが良く歌っていたので、おぼえていました。
 じいちゃんは何時も、上着のポケットに、ハーモニカを持っていて、いろいろな歌を吹きました。サチのじいちゃんは、本当にえらい、えらいと思いました。
 サチとじいちゃんは、海を見ながら、おにぎりを食べました。海からは気持ちのいい風がふいて来ました。
「サチ、ぼつぼつかえろうか」
山の、おんたけさまに、お参りして、かえることにしました。
 サチは、じいちゃんに、10円おさい銭もらって、お参りしました。
「おんたけさん、来年サチが小学校へ入学したら、また来ます。えらい、えらい、じいちゃんを、元気でいますようお守りください。ああそうだ来年は、ばあちゃんも、弟にも海を見せてあげたいです」
お堂のうらの方には、昔の人のお墓が、たくさんありました。

「おんたけさーん
 さようならー」

 動き出した車の窓から、サチは手をふりました。

しろやま会員  中川かなめ



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