広報 あぐい
2009.09.01
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(草木コース 2)〜

シリーズ 阿久比を歩く 107

 



正盛院山門前に建つ“戒壇石”



中央が奥の院の観音菩薩


草木地区の正盛院を友人と2人で訪れた。盆も過ぎ、朝晩は涼しくなったが、日中は残暑が厳しい。「シャカ、シャカ、シャカ」とセミの声が響く。

参道を上って行くと、山門手前右横に私たちよりも背丈の高い石が3段に積まれる。上部の長い、がっしりとした石柱に「山門禁葷酒」と刻まれる。文化財調査報告では「正盛院戒壇石」として紹介。

戒壇かいだんとは、僧に戒めを授けるために築いた場所。鑑真(奈良時代来日した唐の学僧。日本の律宗の祖)が奈良の東大寺に設置したのが最初であるといわれる。律宗や禅宗寺院の門前に建てられた石柱を「戒壇石」と呼ぶ。

突然、寺を訪ねたが住職が快く、戒壇石の話を聞かせてくれた。なぜ「山門禁葷酒」と刻まれているか尋ねる。

葷酒くんしゅの“葷”はネギやニンニクのようなにおいのくさい野菜を意味します。食べた後、口の中でにおいが残る食べ物は相手に不快な思いをさせるでしょ。寺の僧は、あなたたちみたいに訪ねて来る人としゃべるのもお勤めの一つです。お酒の飲み過ぎは心を乱します。だから『葷』や『酒』は寺の山門より奥に持ち込まないようにしたんですよ」

冷たいお茶をごちそうになり、境内を離れる。セミの声は騒がしい。日差しもきつい。さきほど飲んだお茶も、あっという間に汗に変わる。

「ここに来る前に、昨日の夜、中華料理食べて、ビールを飲んだって言ってましたよね、山門くぐってもよかったんですか」と友人が言う。「寝る前と朝、しっかり歯を磨いたから大丈夫。うがい薬で念入りにうがいもしたから完璧だよ」。「さすがですね」。「ほめられることじゃないけどね…」。

「奥之院」の矢印に沿って「秋葉神社奥の院観音菩薩」を探す。うっそうと木が生い茂る、薄暗い場所で「観音菩薩」を発見。コンクリートブロックで造られた小さなお堂の中に「観音菩薩」は安置される。

住職の話によれば、別の場所で土の中に埋まっていた菩薩像を地元の人が見つけ、秋葉神社奥の院に移してまつったらしい。今も供養花は絶えないとのこと。顔の表情は穏やかだ。

手を合わせ、奥の院を後にする。周辺の墓地には、盆に供えられた、オレンジ色のホオズキがよく目立つ。「お墓にピーマン供えるんですか?」。友人はホオズキを知らなかった。



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