広報 あぐい
2009.05.01
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どうぶつ村は大さわぎ

〜みんなの童話〜

 

 町のはずれに、こんもりした森が、あります。町の人たちも、よくさんぽにでかける森です。
 森には、いろいろなどうぶつが、すんでいます。
 お日様が、にこにことでてきて、あたたかくなってきました。
 のねずみかあさんも、大忙しです。
 赤ちゃんが、5ひきもうまれたのですから。ミルクをほしがる子、あばれてベッドからおちる子、大なきしてかあさんをよぶ子。それはそれは、たいへんなさわぎです。
 今日も、のねずみかあさんは、たべものをさがしにでかけました。
 その途中のことです。草の中になにか、くろいものが、うずくまっています。
 のねずみかあさんは、大びっくりしました。(ねこ!)
 くろいものは、ジーッとして動きません。
 のねずみかあさんは、おそるおそる近よりました。それでも、くろいものは、動きません。
 かあさんが、よく見るとそれは、ふわふわの毛糸であんだあったかそうな帽子でした。
(やれ やれ)ほっとしたかあさんは、その帽子を、もってかえることにしました。よいしょ よいしょと、ひっぱりかけたその時、
「その帽子、わたしが先に見つけたんだから」
 木から、りすかあさんがおりてきていいました。
「いやーね。わたしが先に見つけたのよ」
「いいえ。わたしのほうが先よ。木の上で見つけたんだから」
 2ひきのかあさんは、いいあらそいをはじめました。
「なんだ、なんだ」
 さわぎをきいて、うさぎとうさんが、でてきました。
「一寸きいてくださいよ。わたしが、先に見つけたんだから」
「いいえ。わたしが先なんだから」
 2ひきのかあさんは、どちらもゆずりません。話をきいたうさぎとうさんは、
「それなら、じゃんけんできめれば」
と、知恵をだしてくれました。
「じゃんけんなんて、とんでもない。わたし どうしても欲しいから」
「いいえ。わたしのほうが、もっともっと欲しいの。じゃんけんでは、きめられないわ」
あらそいは、おさまりません。
 そこへ、きつねじいさんが、
「わたしが、きめてあげよう」
と、声をかけました。
「そうした時は、子どもの多いかあさんがもらえばよい」
と、いいました。
「わたし、赤ちゃんのベッドにするつもりよ」
 のねずみかあさんは、いいました。
「子どものボールあそびにつかうわ」
 元気な声で、りすかあさんが答えます。
 これをきいたきつねじいさんが、
「お子は何匹かな、かあさんたち」
と、ききました。
「わたしの赤ちゃんは、5ひきよ」
 のねずみかあさんがいいました。
「うちは、かわいい子が2ひきよ」
りすかあさんも、答えます。
「5ひく2は3か。それでは、この帽子はのねずみかあさんが、もらえばいいわけだ」
 きつねじいさんが、答えをだしました。
 ちょうどそのとき、蜂蜜を集めていたくまばあさんが、通りかかり、みんなのところへきました。
「いい帽子だね」
と、手にとって見ていましたが、
「わたしも欲しいよ。でもねぇ、一番欲しいのは、おとした人では、ないかしらねえ。1日か2日そこに置いとくのは、どうかねぇ」
と、いいました。
 森一番のものしりの、くまばあさんの話をきいて、みんなは、それもそうだと思いました。
 リスかあさんも、のねずみかあさんもあきらめました。
 次の日、人間のおばあさんがやってきて、帽子を見つけると、「おやおや。こんな所におとしていったのね。まあ、まあ」と、帽子をひろい、枯れ草をはらうと
「よかった、よかった」
と、帽子をかぶってかえりました。

しろやま会員  片山 直子



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