広報 あぐい
2005.09.01
バックナンバーHOMEPDF版 ダウンロードページへ

みきちゃんのかさ

みんなの童話

 みきちゃんは、小学2年生です。きょうは日直で、かえりがおそくなりました。

 お昼からふり始めた雨は、かえりにはほんぶりになっていました。

 げた箱の中には朝はいて来たくつのかわりに長ぐつがおいてありました。そして中に、
『お昼のきゅうけいに、長ぐつとかさを持ってきました。母より』
と、書いたメモが入っていました。

「お母さんお仕事してるのに持って来てくれたんだ」

 みきちゃんはメモをポケットに入れると、長ぐつをはきました。かさ立ての前に立って、とってにピンクのリボンのついたかさをさがしました。リボンには『あいもとみき』とししゅうがしてあります。

「あれっ、かさがないよ」

 かさ立てには、数本のこっていましたが、ほねが折れていたり、やぶれていて、さしてかえれそうにありません。

「どうしてないんだろう」

 みきちゃんは、あちこちさがしました。かさ立ての下ものぞいて見ました。でもありません。

「しかたがない。走ってかえろう」

 おもいきって、雨の中にとび出しました。

 ずぶぬれで家にかえりました。かぎでげんかんを開けるとバスタオルときがえがおいてありました。

「お母さんだ」

 みきちゃんはふくをきがえるとキッチンのテーブルに、
『お母さんありがとう。とってもうれしかったよ』
と、びんせんに書いておきました。

 みきちゃんは2かいの子どもべやに行くと、しゅくだいをやりはじめました。

「ただいま」

 お母さんがかえって来ました。みきちゃんは気がつきません。お母さんはげんかんのろうかにびしょびしょのふくを見つけました。

「へんねえ。かささしてもこんなにぬれたのかしら?」

 ぬれたふくをせんたくきの中に入れると、キッチンに行きました。テーブルの上のメモを見つけました。

「よかった、かささしてきたんだ。」

 でも、お母さんはげんかんにみきちゃんのかさがなかったような気がしました。

「かさがないわ」

 げんかんに行ってお母さんはつぶやきました。

「みーき、みーき」

 みきちゃんは、2かいから下りてきました。

(しまった。かさがないのばれちゃったかな?)

 みきちゃんはつぶやきました。

「かさはさしてこなかったの?」

 お母さんがききました。

「かさ、なかったの」

「なかったってどういうこと?メモにはありがとうって……」

「だからかさはなかったの。でもお母さんのきもちがうれしかったから書いたの」

と、みきちゃんはこたえました。

「ピーポン、ピーポン」

 げんかんの外にだれか立っています。

「は〜い」

 お母さんがドアを開けました。

「まいちゃん!」

 同じクラスのまいちゃんでした。

「ごめんなさい。」

 まいちゃんは、あたまを下げました。雨は、もう止んでいます。

「わたしの家しってたの?」

 まいちゃんは、1週間前にてんこうして来ました。お母さんがにゅういんしたためにおじさんの家にあずけられたからです。

「あいもとみきちゃんの家はどこですかって、さがして来たの」

と、まいちゃんはこたえました。

「そうだったの。でも、どうしてわたしのかさをもってるの?」

 まいちゃんは、手にみきちゃんのかさをもっていました。

「ごめんね。かさ立ての前を通ったら、かわいいリボンのついたかさがうらやましかったの。みきちゃん、本当にごめんなさい」

 まいちゃんは、今にもなきだしそうです。

「まいちゃん、もういいよ。てんこうして来たときから友だちになりたいとおもってたの」

「ありがとう。お友だちになってね」

と、まいちゃんはえがおになってこたえました。

 みきちゃんのお母さんは、2人をやさしく見つめていました。

しろやま会員  木村 久世



<<前ページへ ▲目次ページへ 次のページへ>>