2014.11.01
広報あぐい トップ » その他(1)
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 広い原っぱで牛のモウばあちゃんは、草をもぐもぐ何かぶつぶつ、行ったり来たり。
        『草刈ができないから 好きなだけ自分で食べておくれ』
        と、汗をふきふきおじいさんは言ったけど、
         とうに草は食べきってしまい、モウばあちゃんは、ほねと皮ばかりに。すっかり年をとっていた。
         どっとこしをおろし、畑の向こうのじいさんの家を見た。
         家族がおいしそうにごはんを食べている。いいなあ。わたしも仲間がほしいなあ。モウばあちゃんは、しみじみ思った。
         ある朝、キジの家族がかけ足でやってきて、
        「モウばあちゃん、おねがい。この子ちょっとあずかってくださいな。モウばあちゃんは見つけやすいので、まよわずもどって来れるから助かるわ。朝ごはんを探しに行ってきます」
         じっとしているだけなのにと、モウばあちゃんは、モウモウとわらった。
         お日さまが上がってくると、ウサギの親子がさんぽに来た。モウばあちゃんは、丸くなって温まっていた。ウサギは何も気づかない。
        「ちょうどいいところに大きな石があるわ。ここで休みましょう。とっても温かくて、すわりごごちがいいわねえ」
         モウばあちゃんの背中によりかかり、葉っぱのおべんとうをたらふくたべたら一眠り。
         その間にモウばあちゃんは、ちらばっている葉っぱの残りを静かに片付けた。
         空ではカラスが、モウばあちゃんの背中めがけて 食べ物おとし。
        「当ったカアー! 外れたカア! モウばあちゃん、坂道に草あるよ アォアォ たくさん アォアォ」
        と、森へ飛んでいった。
         どれどれ、出かけてみようかな。モウばあちゃんは立ち上がった。
         すると、サルたちが森の方で横一列に走ったり、止まったり『だるまさんが ころんだ』をしながら木の実取り。両手や口にくわえても持ち切れず、
        「モウばあちゃん、おいしいから食べてね。食べて!食べて!」
         母さんザルのまねをして、子ザルが実を一列に並べていく。
         モウばあちゃんは、モウモウモウとわらった。
         モウばあちゃんは、少し太ってきた。それよりもみんなに会うのがうれしくて、うれしくてたまらない。一人になるとモモゥーとわらった。
         ある夜、じいさんの家のイヌがハァハァさせて、原っぱへかけ上がってきた。
        「野菜どろぼうがいる!三人だ。モウばあちゃん、力貸してくれ」
         あとから追いついたネコは、
        「わたし、みんなに知らせてくる」スゥー スッとす早く走って、モグラに知らせた。モグラは近道で周りのみんなに伝えた。
         その間にモウばあちゃんとイヌは、作戦を立てた。
         大きなモウばあちゃんの背中にキジとカラスとサルが乗って、羽としっぽとつので、ものすごく大きいかいじゅうになり、どろぼうに近づく。
         モグラは畑の道あんない。足音ひそめてのっしのっし、出発だ。
         ウサギは、一足先回り。どろぼうの足元でそろって丸くなる。
         静かないなかの夜にとつぜんワンワンワン!やかましい合図。
         ウサギがいっせいにどろぼうの足首をかじりだした。
        「いたっ!いてて、なんだ!」
         どろぼうは、足首のいたさを 手さぐりしながら、顔を上げると、
          カアクックキー ミャアー
          カウカウ
          ワンギャアキー
         ぶきみな鳴き声のかいじゅうがどんどんせまって来るではないか。
         どろぼうは、びっくりぎょうてん。声も出ず何もとらず、ころびながら逃げていった。
         原っぱは朝からにぎやかだ。みんなでよくやった、うまくいった、とわらいが止まらない。わくわくして体もとまらない。モウばあちゃんは、モウたのしいモウうれしいと、何度もわらった。しまいに
        「仲間がいるモウーモウ最高」
        と、さけんだ。
         みんながどっとわらった。
しろやま会員 やまさき のりこ
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