広報 あぐい
2008.02.15
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祭りばやしが聞こえる − 萩大山車(はぎおおやまぐるま)編 −

 
4月になると各地区で春祭りが開かれ、威勢のいい祭りばやしが聞こえてきます。今回からシリーズで町指定文化財5台の山車にスポットを当て、祭りにかける取り組みや意気込みについて紹介します。

「坂下ろし直前の心臓の“バクバク”感を楽しんでいます」と身振り手振りを交えて、祭りの話に夢中になるのは萩大山車(はぎおおやまぐるま)保存会の青木賢治さん。

萩の祭礼は毎年4月の第2土曜日と日曜日に行われる。“おくるま”と呼ぶ萩大山車は、明治44年に竣工式を挙げた記録が残る。施された彫刻のほとんどが彫常(ほりつね)一門の作。


前山の懸魚の「龍」。昭和25年初代彫常作。
(写真提供 青木賢治さん)

前山の懸魚(げぎょ)と呼ばれる部分に取り付けられた「龍」は“初代彫常”秀逸の作品。懸魚をさほどいたみのない「松に天狗」から「龍」の彫刻に替えたのは“おくるま”をより立派なものにしたいという萩地区の熱意の表れ。今にも飛び出してきそうな迫力ある「龍」を山車保存会のメンバーは誇らしげに自慢する。

囃子(はやし)の音が勢いを増す。引き手と観衆の緊張感がみなぎる。「いくぞ」。後見(こうけん)赤法被(あかはっぴ)に目で合図を送る。その瞬間、赤法被の持つ拍子木(ひょうしぎ)から「カチカチカチ」と音が奏でられ、山車は動き出す ―

祭りが最高潮を迎える「坂下ろし」の一場面。


坂下ろしの一場面
(写真提供 藤野道子さん)

大山祗(おおやまづみ)神社境内から急な坂道を勢いよく()き下ろす。桜が舞い散り、砂煙が上がる。動きを止めずに(かじ)を取り、山車を90度回転させ、そのまま一気に細い道を直進していく“おくるま”の勇壮な姿は見る者も魅了する。

「バクバク感の後は、うれしさと感動で鳥肌が立ちます。この感じがたまらないんです」

2005年開催の愛知万博イベント「あいち山車・からくり総揃え」に萩大山車も参加。記念DVDが製作され、そのワンシーンに「坂下ろし」が使われている。

「亀崎やほかにも知多地方には立派な山車祭りがあるのに、見る人が見ればすごいのかなあ」と当時、萩地区で話題になったとか。

万博参加の際に、ちょうちんを新調したことがきっかけで、土曜日に(よい)祭りが行われるようになった。「以前よりも祭りの雰囲気が盛り上がってますよ」と青木勇夫萩大山車保存会長は喜ぶ一方、「お囃子をやってくれる子どもが減っています」と伝統的な囃子が今後継承できるかを心配する。

青木賢治さんは「子ども囃子」の指導にも熱を入れている。「私もそうでしたけど、子ども時代の楽しい思い出は大人になっても残ります。町中の子どもたちに大山祗神社へ集まってもらい、常舞台(じょうぶたい)で『お囃子コンサート』が開けたら」と夢を語り、「コンサートに出演してくれた子どもたちに『坂下ろし』を、お礼に披露します。最高のおみやげだと思いますよ」。さらに話は続いた。

次回は「宮津北組山車」を紹介します。



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