| 石炭もニシンも消えて街の灯を栄枯盛衰の凩たたく |
講師 岡本 育与 |
| ゆく雲にのりて行きたし夕映えの雲間で招く光の宙へ |
山本きさ子 |
| 葉を落としすっくと立ちし銀杏の木人逝く時もかくの如きか |
渡辺百合子 |
| 「急ぎなら」「借りたい日に」と美女の笑み罠がありそなサラ金CM |
奥田 貞子 |
| 春の雪溶けゆくやうに優しさに老いの心のほぐれて行きぬ |
佐野 雄造 |
| 切れぎれの思いよぎりて眠られぬ夜半にラジオのイヤホーンを取る |
勝 暁子 |
| 寒空に竿竹売りの声響き移り行く世に逆らう如く |
竹内 清己 |
| 現代の世相を見てか「勿体ない」総理の一言吾が意を得たり |
大村寿美子 |
| 虹色の十二単の衣をまとい荒れ地の中にくずの花咲く |
加藤かずみ |
| 鏡見て顔の縦皺伸ばしつつ「美人になーれ」と呪文を掛ける |
木村 久世 |
| 年歳よりも派手な装いこそばゆい気分を変えて講演会へ |
竹内 久恵 |
| 叔母逝けり菩提寺の空に声上げて鳥飛び交ふ霙降る朝 |
田中 太平 |