| 知人への転居通知を書く夕べ故郷(ふるさと)追われし心が疼く |
講師 岡本 育与 |
| 立春の庭に亡夫(おっと)の気配してふりむき見れば山茶花の散る |
長坂吉余子 |
| もみぢの手広げて孫らは押もんを粘土細工の発表気分で |
新美 功子 |
| 啓蟄が過ぎたよ我も暗闇より春の日差しを浴びにゆこうか |
橋立 智子 |
| 富士テレビライブドアへの攻防に黒船襲来幕末を偲ぶ |
桃井 昌子 |
| 「おれ流」に作りし味噌汁に病む妻はポットの白湯(さゆ)をそっと足したり |
山口 昇 |
| ストーブにて豆を煮ながら意のままにのたりのたりと一日過ぎゆく |
山崎 淳子 |
| 掌に数えつのせる年の豆大山となりやがてこぼるる |
山本きさ子 |
| 「頑張らない」私でいいと思いつつのんびりゆっくり新聞を読む |
渡辺百合子 |
| 寒空に裸でもみ合ふ男達弾けるエネルギー舞ひ上がる湯気 |
佐野 雄造 |
| 言葉ひとつ良きも悪しきも重きもの受けたる人の心騒がす |
勝 暁子 |
| 朝には「あさ」夕には「ゆう」の薬包より飲ませて老母のひと日を看取る |
竹内 清己 |