山並みを折れて曲がってなお続く万里の長城の一角に佇つ |
岡本 育与 |
補い合うことの多くなりたるを自然の摂理と言いてまぎらす |
勝 暁子 |
空を切る大蛇の如き飛行機雲多くの人の夢をのせゆく |
桃井 昌子 |
風をよむ廻りの雰囲気感じつつも行かねばならぬ我のこの道 |
橋立 智子 |
青春を丸ごと乗せてペダルふむ私十六自転車通学 |
竹内 久恵 |
胡瓜揉み茄子の炒めのやや飽きて夏の盛りの移ろひ感ず |
竹内 清己 |
カサブランカの百合の香りにひたりつつ娘の来るをひたすらに待つ |
佐野 雄造 |
六十余年すぐると言へど夏くれば戦の記憶に胸いたむなり |
長坂吉余子 |
風鈴は風の持ち来る空の声世界平和の来よと鳴るらむ |
田中 太平 |
刺刺の社会に出でて我もまた心に刺を持ちて帰りぬ |
木村 久世 |
友に似し人に声かけ間違いを詫びれば優しき笑顔の返る |
渡邊百合子 |
山肌の開墾をする父と母終戦直後の記憶のひと齣 |
加藤かずみ |