広報 あぐい
2009.11.01
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ふうちゃんのお月さま

〜みんなの童話〜

 

 とつぜんでした。パパが、てんきんになり、ふうちゃんは、おひっこしすることになったのです。
 半年たって、やっとなれたようちえん。ともだちのまいちゃん、ちかちゃん、ともくんともおわかれです。
 ふうちゃんは、いますんでいる海べのいなかからはなれるのも、とてもかなしいのです。
 ふうちゃんは、あたらしいことになれるのがにがてです。つぎからつぎに、しんぱいなことがでてきました。
 こんどの家、どんなところかなあ
 ちかくにこうえんは、あるかなあ
 ともだち、できるかなあ
 ふうちゃんの頭は、しんぱいとかなしさで、はちきれそうです。でも、こんなことがわかると、パパもママもとてもこまることがわかっています。
 ふうちゃんはじっとがまんします。でも、ベッドからみえるお月さまだけには、ほんとうの気持ちをつたえました。
 お月さまは、だまってきいてくれました。
 とうとう、おひっこしの日がやってきました。
 パパもママも、ほんとうはさみしいのです。ふうちゃんのこともしんぱいなんです。
「さっ、いくか!」
 パパが、けっしんしたようにいいました。おひっこしのトラックがうごきだします。パパの車もあとからついていきます。
 “よこはま”ときいても、ふうちゃんにはわかりません。とてもとおいところのようです。とちゅうねむってしまいました。
「ふうちゃん、ついたわよ」
 ママのこえで、目がさめました。
 ふうちゃんの目のまえに、たかいマンションがみえました。1、2、3…もうなんかいだてかわかりません。パパが、
「七かいの707ごうしつ、ラッキーナンバーだぞ。ふうちゃん、とおいところまでひっこし、ごめんな」と、いいました。
 ちょっとおどけて、ふうちゃんをよろこばそうとするパパの目になみだがみえました。
 ひっこしやさんが、にもつをはこんでくれ、やっとおちついて、へやをみました。まどからとおくのけしきがみえました。すてきなビル、かんらんしゃもみえます。ふうちゃんは、すこしうれしくなりました。
 「ふうちゃんのおへや、どこがいい?」
 ママがききました。
 「わたし、ここ。まどからおそとがよくみえるもん」
 「そうだね。ここがいい。お日さまもいっぱいはいるよ」
 パパが、リビングのとなりのおへやに、ふうちゃんのだいじなぬいぐるみやおもちゃをはこんでくれました。
 その日のゆうしょくは、お店でたべました。スーパーやレストランなどもちかくです。まちぜんたいが、きれいです。人もたくさんいます。ふうちゃんは、みるものぜーんぶビックリです。
すこしずつこの町になれなくちゃ……と、おもいました。
 パパとママは、その日のよるおそくまで、おへやのかたづけです。
 ふうちゃんは、ひとりでベッドにはいりました。
「ママ! でんきつけといて」
「そうね。ママたち、となりにいるからだいじょうぶよ」
 ママが、そっとこえをかけてくれました。
 ふうちゃんは、なかなかねむれません。ひとりになると、また、しんぱいなことがふくらんで、かなしくなりました。
 まどのほうをみました。すると、まあるい大きなお月さまがみえるではありませんか。
 「わあ! お月さまきてくれたの?ふうちゃんのところにきてくれたの? うれしい。ありがとう」
 ふうちゃんは、げんきがでました。そして、お月さまをみながらねむっていきました。

しろやま会員  ふじい のぶこ 



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