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2016.05.01


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阿久比町のオアシス 文化の泉

□応募・問い合わせ先 社会教育課公民館係 TEL (48)1111(内1501)

2月号から始まった“阿久比町のオアシス 文化の泉”。絵画や彫刻、生け花など、町民の皆さんの力作を紹介します。掲載作品は庁舎などで展示も行います。次号に掲載する作品を募集しています。阿久比町在住の方であればどなたでも応募できます。どしどしご応募ください。


応募方法
掲載してほしい作品などを中央公民館窓口までお持ちください。(選考は社会教育課が行います。)
応募・問い合わせ先
社会教育課公民館係 TEL (48)1111(内1501)

「うつくしい島」  木村久世さん

 しんくんは、きれいな白い砂浜にいました。海水パンツをはいて、水中メガネを持っていました。
 海の上でお日さまがにこにこわらっています。砂浜から少しはなれたところに、やしの木がたくさんありました。
 海は、どこまでもすきとおっています。あさせでは魚が泳いでいるのが見えました。
「わあ、さかなだー」
 しんくんは、大好きな魚をむちゅうでおいかけました。
「ああ、のどがかわいたな」
 しんくんは、流れるあせをぬぐいました。
 だれかがやしの木の上から、しんくんを見ていました。そして木から下り、しんくんに近づいてきました。日やけして小麦色の肌をした少年でした。もいだやしの実を持っていました。
「ハロー。ぼくの名前はトイ」
 トイくんは、やしの実を一つしんくんにわたしました。
「ありがとう。ぼくの名前はしん」
 しんくんはやしの実をゴクン、ゴクンとのむとたずねました。
「ここはどんな島なの」
「ここは、世界で一番うつくしい島なんだ」
「うつくしい島?」
「お互いを大切にしてるから、あらそいがないんだ」
「ふうーん」
 しんくんは、海を見わたしました。するとイルカが、ピヨーンとはねました。
「トイくん、ぼくに泳ぎを教えてよ。今より上手に泳げるようになりたいんだ」
 トイくんの教え方は、とても上手でめきめき上達しました。
「すごく泳げるようになったから、イルカと競争しようかな」
 しんくんは、じょうだんを言いました。
「できるよ。ついておいで」
 しんくんはトイくんにつれられて、海から岩が顔を出しているところまで泳いで行きました。そして、トイくんは、しんくんを岩の上におし上げました。
「ここならイルカが来るよ」
 しんくんは、しずかな海にとびこみました。
 コポ コポ コポ
 しんくんのこぼしたいきが海水にとけていきます。
(きれいだなー)
 しんくんは、青い海を黄色や青や赤い色の魚たちと泳ぎました。
 ピーッ
 トイくんが口笛を吹くと、何か黒いものが泳いで来ました。
「わあ、イルカだ!」
 しんくんは、イルカといっしょに泳ぎました。
「波が出てきたから、もどるよー」
 トイくんは、大きな声でさけびました。
「まだもどりたくないー」
 波が高くなってきました。しんくんはいつのまにか、イルカを見うしなっていました。しんくんは、流されているのにやっと気がつきました。

「たいへんだ。もどらなきゃ」
 しんくんは、ひっしで泳ぎましたが、波にもどされて少しも進みません。
「しんくんー」
 トイくんの声が、とおくから聞こえてきます。しんくんは、うでがちぎれそうなほどむちゅうで泳ぎました。しかし岸がようやく近づいたと思ったら、大きな波がきて、しんくんはのみこまれてしまいました。
 気がつくとしんくんは、浜辺にいました。しんくんは、トイくんをさがしましたが、トイくんはどこにもいませんでした。
 ―ここは、お互いを大切にしているから、あらそいのない島なんだ―
 さがしに来たお母さんに手をひかれた時、しんくんの心にトイくんの言葉がひびきました。

展示期間

5月16日~30日 庁舎1階ロビーにて展示します。