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2013.11.01


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とっておきのたんじょう日

〜みんなの童話〜

 今日は、とくべつなにちよう日です。
「いいにおい。ホットケーキだ」
 ホットケーキのにおいが、かいだんをのぼってきました。ぼくは、ホットケーキが大好きです。
「朝ごはんにホットケーキなんてだめよ」
 お母さんは、朝はホットケーキをやいてくれません。
「今日は、とくべつなんだ」
 ぼくは、いそいで着がえるとかいだんをかけおりました。
「六さいのおたんじょう日、おめでとう」
 お父さんとお母さんが、言いました。
「たんじょう日にはふしぎな事がおこるもんだよ」
 お父さんは、ぼくのホットケーキにシロップをかけました。
「ふしぎなこと?」
「そうだよ。たんじょう日には、ごちそうがたべられたり、ふしぎな事がおこったりするもんだよ」
 ぼくは、ホットケーキを見つめてうなずき、わくわくしながらたべました。
「ひみつ基地に行こう」
 それから、ぼくは大きな木の上のひみつ基地に行きました。太陽の光がきらきらとはっぱの間からさしこんでいます。
 とつぜん風が、びゆーとぼくのかみをみだしながら、通りすぎました。バサッバサッと枝がゆれました。
「わぁ!てんぐだあー」
 てんぐが枝にぶら下がって、今にもおちそうです。
「おれがてんぐだって、どうしてわかる?おれが見えるのか」
「絵本で見たからさ。すがたが見えるのは、今日はぼくのたんじょう日だからさ」
「そんな事はあとにして、はやくたすけてくれ!」
てんぐのかおがますます赤くなっています。
「どうしたらいいの?」
「そこに落ちてるうちわを投げてくれ」
 ぼくは、うちわを投げました。うちわは風にのってまい上がり、てんぐがうちわをつかみました。
「ありがと、ありがと」
 てんぐは、えがおで言いました。
「さっきはなしてた、たんじょう日って何だ?」
「生まれた日をおいわいするのさ。ごちそうを食べたり、プレゼントをもらったりするの」
「ほう」
 てんぐの目がうらやましそうに、細くなりました。
「じゃ、わしもそのプレゼントとかいうものをあげるとしよう」
 てんぐがうちわをふると、今まで空にうかんでいた雲がスウッととんできました。
「さあ、いい所につれて行ってやろう」
 てんぐはびっくりしているぼくのうでをつかんで、雲にとびのりました。
「ひゃー」
 ぼくは目をつぶって、てんぐにしがみつきました。
「目をとじていては、何にもみえんじゃろ」
 ぼくは、おそるおそる目をあけました。
「わぁー すごい」
 家や学校がおもちゃのように見えて、手がとどきそうです。
 てんぐが、うちわをふりました。
「雲がどんどんあつまってくるよ」
「雨雲をあつめているのさ。雨をふらすのを見せてやろう」
 雲は、大きくなりました。
「これくらいでいいだろう。あつめた雨雲をぜんぶふらすぞ」
「うわぁ、すごい! すごいなあ」
 町中に雨をふらせて、雨雲はどんどん小さくなりました。
「さあ、かえるぞ。町をきれいにあらったからな」
「わぁー、にじだ。きれいだなー」
 てんぐは、雲にのった所にもどりました。
「てんぐさん、ありがとう。おもしろかった」
「それはよかった。たんじょう日のプレゼントになったかな」
「うん、今日はとっておきのたんじょう日だよ」
 てんぐは雲にのって、にじが出ている空にきえていきました。
 ぼくが家にかえると、お父さんとお母さんのプレゼントとごちそうが並んでいました。もちろん、ホットケーキも。

しろやま会員 木村久世