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2013.03.01


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みんなの たんじょう日

みんなの童話

「ももちゃん、おゆうはんの前におばあちゃんといっしょに、おふろに入りなさいね」
 お母さんが、しょくじのしたくをしながらいいました。
「はぁい」
ももちゃんは、大きな声で、へんじをしました。
 ももちゃんは、二年生です。
 毎日、おばあちゃんといっしょに、おふろに入って、いろいろなお話をします。
 今日も、

「ねぇ、おばあちゃん。
今日、一番楽しかったことは、なぁに?」
「そうねぇ、今日は、何があったかしら。
そうだ、お友だちといっぱいおしゃべりをしたことかな」
「ふぅーん、どんなおしゃべり?
それからぁー?
それでぇー?
どうしたのぉー?」
ももちゃんは、つぎつぎに聞いていきます。
 おばあちゃんの話がおわると、
こんどは、おばあちゃんが、ももちゃんに聞きます。
「今日、一番楽しかったことは、なぁに?」
「うーん、いっぱいあるから、
どの話にしようかなぁー」
 ももちゃんは、ゆげでまっ白になったてんじょうを見上げながら考えています。
「ねぇ、おばあちゃん。
もうすぐわたしのたんじょう日、
何才になるか知ってる?」
 おばあちゃんは、にっこりして、
「もちろん、知っているわよ。
そう、もう八才になるのね。
この前、ぴかぴかの一年生、と
思ったら、もう二年生、早いわね」
 ももちゃんは、にこにこ顔です。
 シャボンのいっぱいついたタオルで、体をゴシゴシあらいながら、
「プレゼントは、何かなぁー。
早くたんじょう日が、
こないかなぁー」
ももちゃんは、とてもうれしそう。
 その時、ももちゃんの手が、ぴたっ、と、とまり、少ししんけんな顔になって、
「あのね、おばあちゃん、
おばあちゃんもわたしといっしょに八才になるんだって」
「えっ、どうして?
どうしておばあちゃんも八才なの?
おばあちゃんが生まれたのは、もうずっーと前で、たんじょう日も七月よ」
 おばあちゃんは、目を、パチクリさせています。
 ももちゃんは、とくいそうに、
「それはね、おばあちゃんは、わたしが生まれたから、おばあちゃんになったのでしょ。
だから、五月十日が来ると、
わたしといっしょに、八才になる、ということなの」
「あぁ、そうねー、ほんとね」
 おばあちゃんは、うん、うん、とうなずきながら、
「そうね、その日に、おばあちゃんになったのね」
 と、うれしそうです。
「じゃぁ、おばあちゃんも、まだまだわかいのね。ももちゃんに、まけないように、もっと、がんばらなくちゃぁー」
「うん、わたしも、おばあちゃんにまけないように、がんばろぉー」
 戸のむこうから、お母さんが、
「もう、おゆうはんのしたくが、できましたよ。
はやく、あがってね」
と、よんでいます。
「はぁーい。あっ、お母さんも、八才だ。
お父さんも、八才。みーんな八才。
みんなでいっしょに、
おたんじょう日、おめでとうー」
 ももちゃんとおばあちゃんは、ゆぶねの中で、ぱち、ぱち、ぱち、と、手をうって大よろこび。
「あっ、たいへん。
四人のたんじょう日だから、
ケーキを四こも作らなくちゃぁ。
お母さん、できるかなぁ」
 ももちゃんは、しんぱいそう。
「だいじょうぶよ。みんなで作れば。ももちゃんも、てつだってね」
「うん、みんなのたんじょう日だものね」
 ももちゃんは、やっと、あんしんしたようすで、おおきくうなずきました。
 そして、元気よく、おふろの戸をあけて、大きな声でいいました。
「おかあさぁーん、もうおふろから、出ますよー。
おなか、すいちゃったぁー」
 だいどころからは、ももちゃんのだいすきな、ハンバーグのにおいが、ぷぅーんと、してきました。

しろやま会員 にしづかえみこ