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2011.05.01


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やっぱりおかあちゃんがいい

〜みんなの童話〜

 まさとくんは、おかあちゃんが大すきです。
 保育園に、いちばんはじめに、おむかえに来てくれるのは、まさとくんのおかあちゃんです。からだの大きいおかあちゃんは、すぐにわかります。
 いつもニコニコしているおかあちゃんです。
 でも、このごろ、まさとくんは、元気がありません。大好きなおかしも、あまりたべなくなりました。少しだけ、おかあちゃんのことがきらいになったのです。
 それは、おかあちゃんが大きな口を開けて、「ガハハ」とわらうからです。おかあちゃんがわらうと、口の中の金ばや銀ばもまる見えです。
 これはなんだか、かっこわるいと思えるようになってきました。
 よそのおかあちゃんたちは、まさとくんのおかあちゃんのような、大きな口を開けてわらいません。
 そこで、まさとくんは考えました。(そうだ、おかあちゃんがママに変身すればいいのだ)
 つぎの朝です。「ママー。おはようございます」
 とつぜんのまさとくんのことばに、おかあちゃんは、はみがきの水を、コクンとのみこんでしまいました。
 久しぶりのまさとくんの元気な声に、おかあちゃんも、「おはよう」とこたえました。「おかあちゃん、きょうから、ママになるんだよ。どうしたらなれるか言うからね。よく聞いてね」「おかあちゃんが、ママに…」「そうだよ。ぼうしをかぶって、むねにりぼんをつけて、ハイヒールをはいてください。それから、わらうときは小さく口を開けて、ウフフと言うんだよ」
 おかあちゃんは、まさとくんの言うとおりにしようと思いました。
 保育園では、まさとくんは元気いっぱいです。すなばでダムをつくるのも大せいこうでした。どろだんごも、かちかちのものがたくさんできました。(おかあちゃんは、かっこいいママになるんだ)
 そう思うと、おむかえがたのしみでした。
 家ではおかあちゃんが、おむかえのじゅんびでたいへんでした。「ぼうし、ぼうし」と言いながら手にしたのは、しおひがりに行く時の、つばのひろいぼうしです。「りぼんは……、あっ、そうそう。あれを」とむねにつけたのは入園式の時にかったものでした。
 じゅんびのできたおかあちゃんは、ハイヒールをはいて、おむかえにでかけました。歩きながら、「ウフフ、ウフフ」と、なんどもれんしゅうをしました。「せんせい、さようなら」
 まさとくんは、みんなと外に出ました。でも、おかあちゃんのすがたを見つけられません。
 お友だちは、つぎつぎに帰っていきます。まさとくんは、かなしくなってなみだがあふれてきました。
 おかあちゃんは、まさとくんのところまで走って行きたいのです。でも、ハイヒールでは、ゆっくりと歩くことしかできません。
 つばの広いぼうしは、風でとばされそうで、おさえて歩きました。
 やっと、保育園についたとき、「おかあちゃーん」
 まさとくんが、とんで来ました。「ごめんね、おそくなって」
 おかあちゃんは、だきついたまさとくんを、だきあげました。むねにつけたりぼんは、くちゃくちゃになりました。それから、ぼうしもとって、ほおずりをしました。「おかあちゃん、おかあちゃんはママでなく、おかあちゃんがいい」
 まさとくんは、だかれたおかあちゃんのうでの中で言いました。

しろやま会員  むらた ともこ