広報 あぐい
2009.12.15
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(坂部・卯之山コース 6)〜

シリーズ 阿久比を歩く 114

 



弘誓院境内に安置される
“阿弥陀如来像”



秋葉山山頂に並ぶ
“火袋のない燈籠”と“九品仏”


卯之山公園を通り、東側から秋葉山へ上るために造られた石段を上る。後ろを振り返ると、まちの景色が一望でき、高い場所にいることがよく分かる。

山頂には秋葉神社が整備され、左手奥に「火袋ひぶくろのない燈籠」と「秋葉山九品仏くほんぶつ」が並ぶ。2種類の石造物はともに愛宕山あたごやま山頂にあり、小学校運動場建設(坂部・卯之山コース(4)で紹介)のために現在の場所へ移された。

燈籠に火をともす「火袋」がないのは、運動場建設中に破損、九品仏は長泉寺(現最勝寺)29代秀音住職が元禄8(1695)年に建立した石造物だと文化財調査報告に解説がある。

極楽浄土へ往生する者は、生前に積んだ功徳の違いで、9つの階位に分けられるといわれ、それぞれの極楽浄土にいる九体の阿弥陀仏を九品仏くほんぶつと呼ぶようだ。

「中央にいる仏さん、僕の顔に似てませんか」と友人が言う。「確かに、りりしいところが似ているかなあ」。仏の前で思ってもいないことを口にしてしまった私。反省しながら、仏に手を合わせる。

坂部・卯之山コースの最後に、弘誓院ぐぜいいん境内にまつられる「阿弥陀如来像」と「馬頭観音像ばとうかんのんぞう」を探す。参道に大きく「筆塚」と記された石碑を横目に、弘誓院山門をくぐる。

老住職と話ができた。書院に通してもらい、抹茶をごちそうになる。

「子どものころは近くの山にウサギ狩りによく行きましたよ」。うれしそうに話す老住職の瞳が少年の目の輝きに変わる。

弘誓院の山号は“兎養山とようざん”。卯之山地区の地名は、この山号にちなみ「兎之山うのやま」と呼ぶようになったと伝わる。一昔前まで、本当にウサギがすんでいたようだ。

「阿弥陀如来像」と「馬頭観音像」を案内してもらう。座ってひざの前で手を組む阿弥陀像は、小さなお堂の中に安置される。「寶暦二年壬申四月八日」の文字がはっきりと読める。牛馬の守護仏とされる馬頭観音は、山門近くで、ほかの石碑とともに並ぶ。屋根のある場所に置かれていないせいか、風化が激しい。

「2つとも私が住職になる前からあったみたいだからねえ。皆さんが花を供えて大事にしてますよ」寺を後にして、細い坂道を下る。日が沈みかける。路地裏から白いネコが飛び出す。一瞬“ウサギ”かと思ったのは私も友人も同じだった。



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