広報 あぐい
2009.03.15
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あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(横松・萩・宮津コース 1)〜

シリーズ 阿久比を歩く 96

 



“子安地蔵”が安置されるお堂



横松常夜燈

町の石造物が『阿久比の石造物』(昭和53年、町文化財調査委員会編集)にまとめられている。今回からこの調査報告を参考に“石造物巡り”をすることにした。

本編では町内を6カ所のコースに分けて石造物が紹介されている。まずは「横松・萩・宮津コース」に出掛けた。

県道南粕谷半田線の横松交差点南の信号を東に向かい、横松公民館手前の道を南へ少し進んだところに、「横松常夜燈」がある。

常夜燈は街路灯のない時代に、一晩中灯を付けて通行人の灯台の役割を果たした。この常夜燈もかつては、“村人”が毎晩交代で菜種油の補給をして明かりをともし、“村内安全”を願っていた。現在でも電気がつながり、夕方には明かりがともるようになっている。

常夜燈は、高さが約2mもある立派な灯籠(とうろう)。中央のくびれた部分に「天保四癸巳正月吉日」と刻まれた文字がはっきりと分かる。江戸時代末期から人々の生活を見守ってきた。常夜燈横にある倉庫で作業する女性が「毎日朝と夕の2回、必ず手を合わせにくる夫婦がいますよ」と教えてくれた。ほほ笑ましい話を聞き、私と友人は常夜燈に向かい手を合わせる。

次に「横松東側地蔵尊」を探す。横松公民館前を通り、東側に進む。「この時期、目がかゆくて、くしゃみが出て体調悪いよ。君はどう?」と私の問い掛けに、「花粉症なんですか?」。「えぇ。……」。友人との付き合いも長く、毎年この話題をしているのに、本当に私が花粉症であることが分かっていないのだろうか。かゆい目を友人に向ける。

横松交差点南の信号を東に進んでから2つの地蔵尊を見掛けた。横松地区には3つの地蔵尊がある。それぞれ「西側(にしがわ)中側(なかがわ)東側(ひがしがわ)地蔵尊」と呼ぶ。お堂の中には地蔵を安置。花や水が供えられ、人々に大事にされている。

「東側地蔵尊」の前に立つ。天保年間に横松村住人がわが子の安産などを祈願して造った“子安地蔵”であると伝えられる。昭和51年の豪雨でお堂が壊れるなど、安置場所が点々とし、現在は道路脇一画の小さなお堂に納まる。

小さな地蔵は目が下がり、口元が緩む。穏やか顔だ。地元では「眼病平癒」に効く地蔵とも言われているようだ。「かゆい目が治りますように」と私は願い、友人は「子宝に恵まれますように」と2人で声を出して願った。ご利益を期待して、次に向かった。



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