広報 あぐい
2008.05.01
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ひろちゃんのながぐつ

〜みんなの童話〜

 

ひろちゃんのながぐつは、ピンクいろ。ひろちゃんは、ながぐつがだいすきです。はれのひもあめのひも、ながぐつをはきます。
おさんぽもながぐつ。さんりんしゃにのるときもながぐつ。ともだちとあそぶときも、かいものにいくときもながぐつです。
あるはれたひのことです。
「ママ、おさんぽにいってくるね」
ひろちゃんは、ながぐつをはいて、ひとりででかけました。
トコトコトコトコ。
いつもでんしゃをみにくる、ガードしたについたときです。とつぜん、ながぐつが、ひろちゃんのあしをひっぱるように、ぐいぐいすすみだしたのです。
タッタッタッタッ。
ガードをくぐり、たんぼみちをぬけて、ちいさなはしをわたりました。あっというまに、しらないみちまできてしまいました。
それでもながぐつはぐんぐんすすんでいきます。ひろちゃんは、ころばないようについていくのがせいいっぱい。
「うわぁー、こわいよ。まってよ、まってよ」
とうとうひろちゃんは、おおごえでさけびました。そのとたん、ながぐつはピタリととまり、ひろちゃんは、ストーンとふかふかのくさのうえにおっこちました。
「こんにちは、ひろちゃん」
しりもちをついたひろちゃんのまえでおおきなあおいながぐつが、にっこりわらっていました。
ひろちゃんは、めをパチパチさせました。すると、あおいながぐつは、
「ながぐつランドへようこそ。ここは、ながぐつようちえんだよ」
と、ながぐつランドのあんないをはじめました。
いろとりどりのながぐつたちが、おんがくにのってたのしそうにおどっています。
ひろちゃんは、さっきまでこわかったことなんかすっかりわすれてしまいました。
「あっちはながぐつがっこうで、そのむこうはゆうえんちだよ」
「ゆうえんち?いきたい」
ひろちゃんは、ゆうえんちにむかってはしりだしました。すると、トットットットッと、ちいさいながぐつたちが、ひろちゃんのまわりにあつまってきました。
「いっしょにのろうよ」
「どこからきたの」
「あそぼあそぼ」
ひろちゃんは、ちいさいながぐつといっしょに、メリーゴーランドやかんらんしゃにのりました。
「たのしかったー」
かんらんしゃのしたでニコニコしながらまっていたあおいながぐつは、ひろちゃんをちゃいろのいえにあんないしました。
そこには、ちょっとよごれたながぐつや、ボロボロになったながぐつが、ならんでいました。
「ここは、ながぐつのいえだよ。ふるくなったながぐつたちが、やってくるんだ」
(そうだったんだ。わたしのながぐつもあるのかしら)
ひろちゃんは、はじめてかってもらったあかいながぐつをおもいだしました。
へやのなかでは、くろくてピカピカのながぐつが、せっせとながぐつたちをなおしたりみがいたりしていました。
「みんな、ピカピカにしてもらって、ようちえんや、がっこうにはいるのをたのしみにしているんだよ」
あおいながぐつは、しずかなこえでいいました。
ひろちゃんは、だいすきだったあかいながぐつをさがしました。
すると、ありました。みおぼえのあるあかいながぐつが、すみっこにちょこんとならんでいました。
「あ、わたしのながぐつ」
ひろちゃんは、ちいさなこえでつぶやくと、あかいながぐつをそっとなでました。
すると、ねむったようにみえていたあかいながぐつが、キラキラっと、かがやきました。
「あいにきてくれてありがとう」
おもわずめをつぶったひろちゃんのみみに、かわいいこえがきこえました。 そして、めをひらいたときには、ガードのしたにたっていました。
「ひろちゃーん、ひろちゃーん」
とおくのほうから、ママのよぶこえがちかづいてきます。
ひろちゃんのかげが、ながく、ガードのむこうまでのびていました。

しろやま会員 渡辺郁巳



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