広報 あぐい
2007.11.01
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あぐいぶらり旅
〜ふれあいマップを歩く(ごんげん山コース 2)〜

シリーズ 阿久比を歩く 63

 

ごんげん山コース
 
五郷社の入り口付近


西狐谷池に映る“逆さ権現山”

ごんげん山コースの第6チェックポイント「南部小学校」から歩き始める。前回は雨に降られたが今日は秋空のいい天気。フェンス越しに小学校を眺める。休日とあって小学校の校庭はひっそりと静まり返っている。

「新聞に阿久比町で野生のキツネが発見された記事が載っていたよね」。「見ましたよ。今日のごんげん山コースで『ごんぎつね』の仲間たちに会えるかもしれませんねえ」。かすかな期待をいだきながら友人との会話を続け、南の方へ少し歩くと第7チェックポイントの「植公民館」に到着する。

私財を投じて公民館建設に尽力したという女性の銅像が建つ。「多分すてきな人だったんだろうなあ」と友人と話しながら銅像に向かい手を合わせる。

町並みを進む。民家の板壁に、今ではあまり見られなくなった、蚊取線香や農機具の看板が張られている。メッキがはがれ茶色いさびが目立つ。黒色の壁に、昔懐かしい看板は昭和の時代に戻ったようなレトロな雰囲気をかもしだす。

第8チェックポイントは「神明社」。神社へ南から上る石段と南東から上る“女坂(おんなざか)”と呼ばれる参道の接点に『磐座(いわくら)』とよばれる石がある。古代のご神体で祭りの際、神が鎮座する場所と考えられていたようだ。私が女坂から上り、友人は石段を上る。途中で一緒になり、最後は2人で磐座の場所に着く。四方を柵で囲った中に、しめ縄が飾られた石がまつられる。薄暗い境内の入り口で、木漏れ日がとがった石の先に当たる。その光景は、何かが飛び出してくる前兆のような光の輝きを発し、とても神秘的である。

新美南吉の童話『ごんぎつね』の舞台になったと言われる第9チェックポイント「五郷社」に立ち寄る。神社のある森を権現山(ごんげんやま)と呼ぶ。第10チェックポイントの「西狐谷池(にしきつねだにいけ)」から権現山を望むことができる。池の水面に山が映る。友人は「『逆さ富士』ならぬ『逆さ権現山』ですね」と言いながら腕を組み、あごの下を手のひらでなでる。

最後の第11チェックポイント「観音寺」が見えてきた。「キツネは現れなかったね」。「そうですね。これを見てくださいよ。コーン。コーン」と友人が両手でキツネの顔を作り、かくし芸を見せてくれた。私は目を細めた。



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