送り火を焚き終え見上ぐる空低く赤き下弦の月の傾く |
講師 岡本 育与 |
いくさせぬ国となりたる今日の日をよろこび数ふ六十一年 |
田中 太平 |
明日はあす今日の一日が大切と朝の厨にきうりをきざむ |
長坂吉余子 |
紺碧の空と海にてのんびりと幾種の人種とすごした七日 |
新美 功子 |
じじばばの二人の生活潤うは時々会える孫の愛らしさ |
橋立 智子 |
登下校の児童へ一声見守り隊のシルバーパワーが今役に立つ |
桃井 昌子 |
たまさかに自転車漕げば向かい風僅かな坂道老いに厳しき |
山口 昇 |
テレビ無きも慣れてしまえばそれも良しと
言いつつ直ればまたながら族 |
山崎 淳子 |
「こおろぎがつづれさせよ」と鳴いてゐる母の言葉も死語となりたり |
山本きさ子 |
様々な人の乗りいるロンドンの地下鉄に乗る不安抱きつつ |
渡辺百合子 |
養殖の鰻くの字に背が曲がり成長早める薬害疑ふ |
奥田 貞子 |
倒れてもまた倒れても起き上がり優しく揺るるコスモスの花 |
佐野 雄造 |