広報 あぐい
2006.06.01
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あぐいぶらり旅 〜村絵図を歩く(角岡村)〜

シリーズ 阿久比を歩く 29

 


角岡村絵図
(阿久比町誌資料編1村絵図解説書から)


雲谷寺山門の彫刻の龍


唐松の井戸

今回は角岡村(現在の大字椋岡地区西部)絵図を見ながらぶらり旅に出掛けた。

最初に雲谷寺を訪れた。山門の上方からりゅうが私たちをのぞいている。

門の正面部分にある彫刻の龍である。

寺の山号が“龍臥山”。龍と縁深いようだ。

住職から龍にまつわる話を聞く。室町時代、多くの水墨画を描いた画僧、雪舟がこの地を訪れた。雨が降らず農作物が育たないと村人が困っていると、雪舟は衣ケ池(現在の丸山公園付近)のほとりで雨乞いを始める。願いはかない雨が降り出す。池の中から昇天する龍神を見て雪舟は「龍之画」を描いたと伝わる。

雲谷寺には、この画が寺宝として残る。「すごい形相で天に昇っていく龍の姿が描かれてますよ。日照りの時に出してコップいっぱいに水を張り、7日間祈願すると必ず雨が降ったので“雨乞いの龍”と言われています」と住職が話してくれた。

広い境内を散策する。今日は5月の第2日曜日で“母の日”。六地蔵にはピンク色のカーネーションが供えられている。そのすぐそばには池がある。龍ではなくカメが長い首を伸ばしていた。

次に平泉寺と氏神と記された場所に向かう。

平泉寺は知多四国第16番札所。源頼朝が野間大坊(美浜町)に父義朝の墓参りの帰途に訪れ、中秋の名月を眺めた場所である。県指定文化財の不動明王立像などの仏像でも有名だ。

線香のにおいが境内に広がっている。参拝者とあいさつを交わし、平泉寺を後にして氏神を探した。

細道のブロックに腰掛け、会話をする高齢の男女に尋ねると、平泉寺東の民家付近を指差して「氏神はこの辺りにあったと聞くよ。わしもまだ若いからそんな昔のことは知らないなあ」と冗談を言いながらおじいさんが応えてくれた。(現在は椋岡地区の八幡神社に移転。)

地図を南下して唐松の井戸に着いた。田んぼの脇に四方を柵と石で囲まれた古井戸が残る。

この井戸は慈覚大師円仁の祈とうにより水が湧き出し、農民を日照りから助けたと伝えられる。緑色に濁った水の表面をアメンボウが飛び跳ねていた。

同じ村の中に雨にまつわる伝説が2つあった。村人が昔から、水の確保に大変苦労していたことが伝わってきた。



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