2015.03.01
広報あぐい トップ » その他(1)
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 あやちゃんは、今日も元気いっぱい学校から帰って来ました。
        「ただいま。おばあちゃん」
        「ああ、お帰り」
         おばあちゃんは、縁側で編み物をしていました。
      「おばあちゃん今日はね。みっちゃんとかなちゃんが、おひなさまを見に来るよ」
        「そうかい。草餅もできているからみんなに食べてもらおうよ」
         しばらくすると、
        「こんにちは!」
         元気な声がしました。
        「あがってよ。こっちだよ」
         あやちゃんは、急いで玄関に行きました。みんなを座敷にあんないしています。

        「かわいいね。このお顔」
        「この人、何しているの?」
         かなちゃんの弟のやす君が、五人ばやしを指さして聞きます。
        「それは、五人ばやしといっておはやしをする人だよ」
        「おはやしを聞く人はだあれ?」
         やす君は、お姉ちゃんについてきて何でも聞きます。
        「聞く人は、おひなさまとおだいりさまだよ」
         やす君は、
        「ふうん」
        と、感心したような顔をしています。
        「この小さいおままごと、かわいいね。ほんものみたいね」
         おひなさまの道具を見てみっちゃんが、いいます。みんながわいわい話していると、おばあちゃんが、お茶と草餅を持ってきてくれました。
         みんなは、
        「いただきます」
        と、草餅を食べはじめました。
         にこにこと、みんなの顔を見ていたおばあちゃんは、ぽつりぽつりと、話しはじめました。
        「みんなは、いい時に生まれたよ。おばあちゃんの小さかったころお国に戦があってね。毎日毎日、飛行機が飛んできて爆弾を落とすのさ」
        「それで、どうなるの?」
        「火事になって家は、燃えてしまう。爆弾に当たった人は、死んでしまうのさ。こわかったよ」
        「それでみんなは、どうしたの?」
        「田舎に知り合いがある人は、田舎へ逃げていく。でもみんなが一度に逃げようとするから、なかなかいかれなかったよ」
        「おばあちゃん。その時どうしていたの?」
         あやちゃんが、ききました。
        「悲しかったよ。それでもやっと逃げることができた。その時には、みんな捨てて逃げた。おひなさまもね」
        「おばあちゃん、悲しかったね」
        「そうだよ。おひなさまのことは今でも忘れられないよ」
         独り言のようにいいました。
        「あれ! 大人でもおひなさまほしいの? わたしもほしいよ」
         かなちゃんが、驚き顔でいいます。
        「そうだよかなちゃん。誰でも美しいものは大切に思うし、ほしいとも思うものだよ」
         おばあちゃんは、話を続けます。
        「大きくなっておひなさまをさがしたよ。でも、私のおひなさまは何処にもなかったよ」
        「おばあちゃん。悲しかったね」
         みっちゃんが、いいました。
        「それがね、民族資料館(古い道具や器具が飾ってある)に飾ってあったのよ。まあ、そのときの嬉しさはなんともいえなかったね。だから、もうさがすのやめたよ」
        「おばあちゃん。おひなさまにあえてよかったね」
       小さいお客さまたちも、喜んでくれました。
おわり
(しろやま会員 片山 直子)
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