2014.07.01
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 七時、かのんちゃんは、夜ごはんを食べおえました。
        「次は、おふろだね。」
         ママは、新しいタオルやパジャマのじゅんびを始めます。
         かのんちゃんは、おふろが大好きです。毎日、パパとオモチャのあひるさんと一緒に、おふろに入ります。
         最近、かのんちゃんは、気になっていることがあります。
         おふろがしゃべるのです。おふろには、ママもおばあちゃんもいないのに、女の人の声がするのです。
        「お湯はりをします。」
         ほら、今日も聞こえました。
        (だれがしゃべっているのかな。おふろかな?おふろのお口はどこにあるのかな?)
         かのんちゃんは、いつもよりも速く一人でハイハイをして、おふろのお口を探しに行きました。
        「あれっ、かのんちゃん?やだ、もうおふろにきたよ。」
        「よっぽど好きなんだね。まだわいていないよ。」
         パパとママは、笑いながら話しています。
        (おふろのお口を探しに来たんだよ。)
        「あーあー。」
        「ほらやっぱり。喜んでいるね。」
         かのんちゃんの返事は、二人には伝わっていないようです。
        「あと、およそ五分でおふろに入れます。」
         おふろから声が聞こえました。あの声です。けれども、声がどこから聞こえてくるのか、かのんちゃんには、わかりません。
        「おふろがわきました。」
         またまた声が聞こえました。
         また、おふろがしゃべったのです。けれども、どこがおふろのお口なのか、わかりません。
         かのんちゃんは、キョロキョロと、声が聞こえてきた方をみましたが、かのんちゃんやパパと同じようなお口は、おふろについていないので、みつけられませんでした。
        (今日もみつからないなあ。)
        「うーうー。」
         かのんちゃんは、パパとお湯につかりながら、ふきげんに手をバチャバチャさせていました。大きな波がたつので、あひるさんはめいわくそうにしています。お湯もへっていきます。
        「かのんちゃん、ここのボタン押してごらん。押せるかな?。」
         パパが、四角いボタンをさして言いました。
         パパが抱っこしてくれて、ボタンがとどく高さになったので、かのんちゃんは、押すことができました。
        「お湯をたします。」
         急に、おふろが目の前でしゃべったので、かのんちゃんは、びっくりしました。
         ついにおふろのお口をみつけたのです。
         かのんちゃんは、うれしくなって、教えてくれたパパにニッコリしました。
        「かのんちゃん、ボタン押せたね。うれしいね。」
         パパはそう言うと、大きな声でママをよんでいます。
        「かのんちゃんが、初めてボタンを押せたよ。すごいすごい。」
         パパは興奮して、ママに話しています。
        「すごいね、大成長だね。」
         パパとママは話しながら、ニコニコとかのんちゃんをみました。かのんちゃんは、おふろの口をみつけて、ニコニコしています。
        (おふろのお口をみいつけた。やったやった。)
        「ぶぁーいっ、ぶぁーいっ」
         かのんちゃんは両手を上にあげて、バンザイしながら、ごきげんな声をだしました。
        「かのんちゃんも、すっごい喜んでいるね。」
        「ボタン押せてうれしいよね。」
         パパとママは、なんだか違うことで喜んでいます。
         なんだか違うな。でもまあいいか。
         パパもママもかのんちゃんもみんなニコニコとごきげんな夜になりました。
「しろやま会員」 すぎむら まりこ
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