★阿久比町短歌の会

平凡に生きんと思えば益々に世の不条理がわが身に迫る	岡本　育与
雪ちらひ残り葉おちし蝋梅の花明りする立春の庭	長坂吉余子
朝光に群れ咲く蝋梅琥珀色目白飛びきて蜜すい遊ぶ	竹内　久恵
目覚おそき吾を案じてそっと開く扉の音に安らぎ覚ゆ	大村寿美子
クラウンは小児病棟や被災地へ笑いを運び心なぐさむ	橋立　智子
雨の降る夜景を見ればビルの窓灯りまぶしく生活（くらし）を映す	佐野　雄造
東北の賢治の世界天に見る銀河鉄道我も乗りたり	木村　久世
寒けれど弥生三月近づきて静から動にスイッチ入れる	奥田　貞子
廃線のプラットホームのベンチには老いを休める冬の陽だまり	加藤かずみ
啓蟄でまだら寒気に潔く着替えて畑に春を準備す	山崎　淳子
着物着て高下駄履いて蛇の目傘雨も楽しき青春のあり	桃井　昌子
むなしきは去年（こぞ）に咲きにし絆花震災瓦礫の山は動かず	三留　　享

★狂俳英比会