★阿久比町短歌の会

血を吸いて血を吸いすぎてふらふらと幸せそうに藪蚊飛びゆく	岡本　育与
餌を求め村をさまよう子熊らに猟銃を撃つ人も辛かり	山口　　曻
広き田を固める低い山々はみな柔らかな円みをもちぬ	勝（かつ）　　曉子（としこ）
今はもや黄金の波に分け入らん磐梯山に光射し初む	三留　　享
物たりで心空しくすごすなり波たたせたき老いの日もある	長坂吉余子
ふるさとの香りを含んだ新米届く猛暑の苦労をかみしめ味わう	橋立　智子
秋立つと音する風は吾が庭の木犀揺らし香りを流す	竹内　久恵
影三倍のカマキリあみ戸にへばりつき風立つ夕べ窓そっと閉ず	西原　禎子
敗戦となりて恩賜の煙草出し粗末な食に取り替えて食む	佐野　雄造
裏畑の柿の実狙ふ百舌鳥の来て高鳴き響き秋の更けゆく	竹内　清己
静寂な真夜をきざむ秒針と吾れ九十年を生きし韻律	山本ささ子
読経する吾の背中によじのぼり喉をならして猫も念佛	桃井　昌子

★阿久比川柳会作品