| 花まりを両手に引き寄せキスすれば花の怪しき魔性に触れぬ |
岡本 育与 |
| 幾許の命残れる我なるや今日も畠に独り草とる |
竹内 清己 |
| 川岸をおおいし草のざわめきて梅雨雲ひとはけ大きく靡ける |
勝 暁子 |
| ガラス戸に可愛く張り付くヤモリが二匹宵のランデブー影絵の如し |
山崎 淳子 |
| 衣替えおかたい役所のクールビズテレビの中も華やぎやわらぐ |
大村寿美子 |
| もう海は眺めゐるもの ボール追ふビーチバレーの娘らの眩しき |
奥田 貞子 |
| 蛇様へ吾が通るぞと咳払い足音立てて草の辺をゆく |
加藤かずみ |
| 生き生きと紫陽花の花咲き誇り青春時代はすぎてゆくなり |
佐野 雄造 |
| 番人の如く置きたる亡夫の靴ほこり払いて忍ぶ命日 |
竹内 久恵 |
| 敢えなくも寄る年波に歩とめ仰ぐ向日葵ゆさりともせず |
田中 太平 |
| のどやかに野蒜とられる両陛下五十年想ひ胸あつく見る |
長坂吉余子 |
| 父の日に娘より届きし養毛剤「老けないでね」とメモも添えられ |
山口  |