| マンションの高層階に蚊はいない魔除けのごとく張られし網戸 |
岡本 育与 |
| 庭一面野菜作りをせし戦時平和の尊き花を楽しむ |
桃井 昌子 |
| 原爆投下「しょうがなかった」と語りたる大臣の暴言我は許さじ |
山口 昇 |
| 「参院選」依頼あれどもこれだけは妥協できない私の一票 |
山崎 淳子 |
| 幼子の入りしあとのお風呂場はアンパンマンが散乱しをり |
山本きさ子 |
平和への祈りを込めて黙 す原爆慰霊式にて鐘なりし時 |
渡辺百合子 |
| 今日も又町の配食頂いて生かされているこの我が命 |
竹内 勝吉 |
| 兵として征きたるわれの身代りと我の日記を母は読みしと |
佐野 雄造 |
| 朝の陽は物干し竿の水滴に写れる空の青を散らせり |
勝 暁子 |
| 風呂沸きしこと告げくるる装置付き会話の相手一つ増えたり |
竹内 清己 |
| またしても身近き人の黄泉に発つ心しずめて写経の筆とる |
大村寿美子 |
| 直系の女三代近く住み冷めたスープも良いといふ友 |
奥田 貞子 |