| 自刃せし忠義の心に揺れながら今美しき鶴ヶ城見る |
講師 岡本 育与 |
| 案内は東北弁の早口でそれでも解る一時間の旅 |
新美 功子 |
| 病む人の過去はどうあれ今はもう早い快復祈るこのごろ |
橋立 智子 |
| 愛猫はわれを従者と思うらし涼しき場所へとわれを誘(いざな)う |
桃井 昌子 |
| 朝の散歩会釈も返さぬ人ありて穏(おだ)しき心少しゆれおり |
山口 昇 |
| 寝そべって氷枕に扇風機開き直りて読書楽しむ |
山崎 淳子 |
| 戦争は勝つも負けるも空(むな)しかり六十年を平和に生きて |
山本きさ子 |
| 歩くことうれしき幼(おさな)のあとを追い夕風の吹く田の道を行く |
渡辺百合子 |
| 熱帯夜の朝の散歩をはやばやときりあげ犬は吾家に向かう |
奥田 貞子 |
| 夏の日の僅かなる間に燃え尽きし蝉の命の路上に転がる |
佐野 雄造 |
| 心急(せ)く夕暮れどきに風鈴の音(ね)いろ涼しく厨を横切る |
勝 暁子 |
| 土用最中秋の気配を背に感じ遅蒔きしたるゴーヤを今日採る |
竹内 清己 |