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2011.03.15


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あぐいぶらり旅
〜建造物を見る(安楽寺)〜

シリーズ 阿久比を歩く 144




虹梁こうりょう上に施された馬の彫刻


大般若経などが納められる経蔵

“知多路の春は知多四国弘法参りで始まる”。よく使ってきたフレーズだが、今年もそんな季節となった。知多四国八十八カ所霊場第十三番札所「安楽寺」の山門をくぐる人々の姿を見てあらためて春を実感する。

寺院建築物群を「伽藍がらん」と呼び、板山地区安楽寺には「本堂」「観音堂」「弘法堂」「地蔵堂」「経蔵」などが配置される。

友人と二人で「ぶらり旅」を始めたのがこの「安楽寺」。ひょんなことから、町内の弘法寺巡りをしようと始まったこの企画。あれから6年。私たちは原点に戻ってきた。

「君はあのころ彼女もいなかったし、おっちょこちょいで……。今では妻子ある一家のあるじかぁ」。友人と過去を振り返り境内に歩を進める。

弘法堂の前は、巡礼者のお参りが後を絶たない。本堂に向かって左横に建つ、観音堂を見る。木造瓦葺入母屋造で明治33(1900)年の建立。町文化財調査報告『阿久比の建造物と彫刻』には、知多地方の山車造営に関わった横松大工の江原氏が携わったことが紹介される。

正面ひさしの向拝ごはいと呼ばれる部分の虹梁こうりょう上には、馬の彫刻が施される。竜や獅子の彫刻はよく見掛けるが馬の彫刻は珍しい。

観音堂には、9年ごとに開帳される秘仏「聖観世音菩薩立像」(平成20年開帳)が安置される。寺には奈良時代の僧行基ぎょうきの作で、仏像に祈願をしたら不自由な足が治ったという話が伝わる。

この寺では、毎年2月の最終日曜日に厄年の皆さんの厄払いが行われるとのこと。その際に大乗仏教初期の多くの経典を集成した「大般若経」を転読しながら、厄払いをする“大般若祈祷会だいはんにゃきとうえ”がなされる。その「大般若経」などが納められている場所が「経蔵」。木造瓦葺方形造で、格子の隙間から、幾重にもなった白い紙が見える。「経」の多さに驚く。

境内で「お参りですか」と老夫婦に声を掛ける。「暖かくなってきたから、知立から出てきました」と笑顔で答えてくれる。

「今の夫婦の姿が老後の理想なんだよね。2人仲良くお寺参りをして、昼はどこかの店でランチを食べて、3時には喫茶店でコーヒーを飲みながら僕はスポーツ新聞で、妻は女性週刊誌を読む。どう?」。「いいですよね。夜は温泉につかれれば言うことなし」。まだまだ先(?)のことと思いながら、車に向かう老夫婦の後ろ姿を見送った。