広報 あぐい
2009.09.15
バックナンバーHOMEPDF版 ダウンロードページへ

あぐいぶらり旅 
〜石造物を巡る(草木コース 3)〜

シリーズ 阿久比を歩く 108

 



平井林池を見つめる“地蔵尊”



竹林の中にある“伍大院墓石”


草木コースの最後は「伍大院ごだいいん墓石」と「平井林池地蔵尊」を探しに出掛けた。

伍大院墓石は、平池地内の小高い場所の竹林に一基だけひっそりと置かれる。1mほどの高さの墓石で、中央に大きく「伍大院墓」と刻まれる。墓石の向かい、北側には“本宮山”がまつられている。

調査報告書では、寛永、正保、慶安(江戸時代)ごろの大峰山修験者が生身成仏した場所だと解説される。

近くで孫と楽しそうに遊ぶ夫婦に話し掛ける。墓石のことについて尋ねると「『ぶらり旅』でしょ。今は石造物を巡っているんだよね、いつも読ませてもらってるよ」と、うれしい言葉を掛けてもらう。

疫病えきびょうが村ではやる。“伍大院”が、病気の人々に代わり苦しみを受けるため、自ら生き埋めとなり、命を絶つ。その後村人の疫病が治まったという話が伝わる。

毎月21日は、この辺りに住む人々で当番を決めて、花などを供えることが続けられる。「毎年9月21日は、近所の人があの場所に集まります。子どものころは、各家庭が重箱にごちそうを詰めて持ち寄り、食べたり飲んだりして、ちょっとしたお祭りでしたよ」と夫婦は振り返る。

自らの命を村人のためにささげた“伍大院”。伍大院が村人を救った功績をたたえる慣習は、今も人々の信仰として続く。

平井林池に着く。平井林池地蔵尊は池の堤から少し離れた場所の一角に置かれ、池を見つめる。

池を築いたときの犠牲者の冥福や村人の安全を祈願するため、宝暦4年に造られた地蔵だ。

池の近くに草木保育園がある。「この池には河童かっぱがいて、毎年子どもたちが『お化け大会』に招待するみたいだよ。仕事で来たときに知ったんだけどね」と私が友人に話す。「河童ですか?」。「勇気を出して『おばけめいろ』を通り抜けた子には、出口近くで待つ河童からプレゼントがもらえるらしいんだよね。子どもたちがプレゼントもらって喜んでいる姿を見たよ」。「河童は見なかったんですか」。「ううん。勇気がないから外で待ってた」。「そうですか……」。

地蔵尊は河童の存在を信じている園児たちの通園を、毎日見守っている。



<<前ページへ ▲目次ページへ 次のページへ>>