

阿久比町と常滑市との境界

知多半島サイクリングロード合流点

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今回から阿久比町の境界線にぶらり旅に出掛けることにした。
役場から常滑市との境を目指して、友人と2人で西へ向かって歩く。地図を片手に進むが、目印になるものがなく境界を探すのはなかなか難しい。看板に目をやると「常滑市」の表示があったので歩く方角を左手に折れ、南に向かう。
天候は晴れ。真っ青な空には飛行機が通った跡が白く十文字に残る。田んぼの土手にタンポポが咲き、ミツバチが花の周りを飛ぶ。「ピチ、ピチピチ、ピチ」鳥がさえずる。
「春ですよね」。「ちょっと聞いてくれるか。きのう車に乗って信号待ちしていたら、フロントガラスに『ボタッ』とヨーグルトみたいなものが落ちてきて、びっくりしたんだよ。カラスの仕業で、その量が半端じゃないんだ。くそー……」。「春本番を迎え、運が付いたじゃないですか」。「……」
舗装された道、砂利道、常滑市との境界だと思う道を進む。無心で歩く。人気はまったくない。途中坂道になり前方の景色が見えない。どこを歩いているか不安になる。頂上が近づくにつれて先が開けてくる。ようやく目の前に阿久比町、常滑市、半田市が入り組む「半田池」が見えてきた。1つ峠を越える。
常滑市との境界に別れを告げ、半田市との境界になる矢勝川沿いを歩く。川を隔てた雑木林でウグイスが鳴く。「ホー、…ケキョ」鳴き方はぎこちないが確かにウグイスだ。しばらく耳を澄ます。ウグイスは鳴き声の練習を繰り返す。3回目の鳴き声が「ホー、ホケキョ」に変わる。思わず拍手をした。「とってもウグッーイスな気分だよね」。「そうですねグッ、グッ、グッ、グッ、グッーですよ」。春らしい絶好調な会話が続く。
知多半島サイクリングロードに合流する。サイクリングを楽しむ人たちとすれ違う。自転車に乗る人たちは、気持ち良さそうに風を感じながら、私たちの横を通り過ぎていく。
2人とも疲れのピークを感じて会話がなくなる。高田橋まできた。目が会ったので、軽くうなずき今日のぶらり旅を終えることにする。近くの植大駅から電車に乗り出発地点に戻った。
次回につづく。 |