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2016.07.01


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阿久比町のオアシス 文化の泉

□応募・問い合わせ先 社会教育課公民館係 TEL (48)1111(内1501)

“阿久比町のオアシス 文化の泉”では、絵画や彫刻、生け花など、町民のみなさんの力作を掲載しています。掲載作品は庁舎などで展示も行います。次号に掲載する作品を募集しています。阿久比町在住の方であればどなたでも応募できます。どしどしご応募ください。


応募方法
掲載してほしい作品などを中央公民館窓口までお持ちください。(選考は社会教育課で行います。)
応募・問い合わせ先
社会教育課公民館係 TEL (48)1111(内1501)

「ミイとパパの休日」  きくかわけいこさん

 今日はいいお天気。ミイちゃんはパパと公園へお出かけ。滑り台や鉄棒、ブランコなど一通り遊ぶと、いつもの場所へ。そこはミイちゃんのお気に入りの場所です。
 隅っこにある四角いベンチの陰にコケが生えています。
「見て、これこれ」
「え、こんなところにコケが生えてるんだ」
 パパはびっくりです。そうっと触りながら、嬉しそうにしているミイちゃんがちょっと素敵に見えました。
「きれいでしょ。柔らかくてふわふわ。うちのイルカさんみたいなんだよ」
 ミイちゃんは大事にしているイルカのぬいぐるみを思い浮かべていました。
「どれどれ、本当だね。気持ちいいね」
 パパも一緒に触ります。
「ここ、ふくらんでいるところがおなか、こっちがおかおで、こっちがしっぽだよ」
 足元に広がったコケを指さしながら、得意げに言いました。
「そうだね、イルカに見えるね。イルカさんだね」
 パパはうなずきながら、コケを見つめました。でも、こんなところにきれいでつやつやしたコケが生えていることが、何だか不思議に思えました。
 コケに夢中になっているミイちゃんを見て、パパは自分が小さい頃、ふわふわした毛布が大好きだったことを思い出しました。
 子どもパパは一人で寝るのが、ちょっと心細かったのです。でも楽しみが一つありました。ベッドいっぱいに広げた毛布に寝そべります。ひとしきりほっぺをすりすりします。いい気持ち。それから、毛布をロールケーキのように丸めて乗っかります。目を閉じると、それはフワフワイルカに変身です。子どもパパより大きくてたくましいのです。二人はいつも一緒で大の仲よしです。
 いっぱい空気を吸ったイルカと子どもパパは元気よく泳ぎ出すのです。
「やあ、イルカくん」
「よっ、待ってたよ」
 いつもの挨拶が終わると『お休みトレーニング』が始まります。
「調子はいいかい?イルカくん」
「もちろんさ。ぼくのまねをしてごらん」
「こう?」
 子どもパパはイルカにしがみついたまま、体をねじりゴロゴロ。向きを変えてゴロゴロ。続けてでんぐり返しもします。背中を丸めてゴロンゴロン。
「いいじゃないか」
 イルカはにっこり笑って、尾びれをふってくれます。
「うまくなったでしょ」
「いや、まだまだ。今度はきりもみジャンプだ。えーい!」
 イルカは思いっきり高く飛び跳ねます。クルクル、シュパッ。三回ひねりのジャンプです。
「すごい、かっこいいね」
 子どもパパもまねをしてジャンプ。うまくできるまで何度もジャンプ。ギシギシ、ドスン。イルカのようにクルクル、シュパッとはうまくいきません。
 子どもパパが夢中でジャンプしていると、「早く寝なさい」というお母さんの声が聞こえたような気がしました。それは「さわってさわって」と言うミイちゃんの声でした。
「いい気持ち」

 子どもパパから我にかえったパパも、コケに触りながら、
「いい気持ち」
 なんだか手のひらも心もぽっかぽかです。
「次の日曜日も来ようか」
「うんうん、来よう」
 パパの方から、来る約束をしました。
「パパ、ついでに水とうのお茶あげちゃおうよ」
「きれいなコケがもっときれいになるかもな」
 ミイちゃんはカバンから水とうを取り出し、生ぬるくなったお茶をゆっくり少しずつ全部かけてしまいました。
「おいしいでしょ。元気もりもりね」
「たっぷりあげたからな」
 二人はにっこり、笑顔です。
 空っぽになった水とうをカバンにしまいました。
 帰り道、軽くなったカバンが気持ちよさそうに揺れていました。