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ものかま大昔のことでした。この地はまだ開かれておらず、人々は、農耕の道にうとく、毎日、獣けを追い求め、木の実を拾い、貝をさぐって、その日を過ごすのに精いっぱいの生活をしておりました。ある晴れた日のことです─。阿久比の穏やかな入江(当時、この地の低地は、深く入り込んだ海辺になっていました)を昇る太陽を背に、一そうの小舟が流れ着き、 この地では珍しい白い衣服を身につけた一人の長身の男が岸に降り立ちました。「おい、変なやつがやってきたぞ……。」獣や木の皮で、わずかに身を包んだこの土地原はで世界を治めておられるアマテラス大神のの人々は、最初は、木や草の陰から、じっとその男のしぐさを見守っていましたが、警戒の色が次第に好奇の顔つきに変わり、おずおずと集まりだしていました。けます。「わたしは、アキクヒの神と言い、いま高た天ま父君の、イザナギノミコトの下し袴ばから生まれた神である。はまことに穏やかで、深い入江もあり、清らかな清水の流れる森や林に囲まれている。苦しんでいる。それは、毎日食べ物を追う生活を続けているからだよ。の流れ込む地を切り開いて田を造り、わたしその不思議な男は、人々に向かって語りかのう、この未開の地に住む人々よ。この地わたしは、この地が気にいった。だが、ここに住むお前たちは、いつも飢えさあ、今日からは、わたしの言うとおり、水第一話 阿久比神社縁起阿久比のあけぼの⑴アキクヒの神     1た  ら  かが

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