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ょうょうゃくっん  つん  ろうくろ つ んゅ  ょうょうりぼりかきながら無表情にみんなの話を聞き、それからポツンと「あした、わしが退治してやる。」と言うなり、また小屋の中へもぐりこんでしもうた。あんなこと言って大丈夫かいのうとみんなで言い合いながら、またぞろぞろとつながって帰ったのだが、驚くじゃあないか、その明くる日に「しんてつさ」が大蛇を食べちまったんだそうな。いつものように、卵をしこたま飲んで、いいごきげんでのろのろと道端へはい出してきたヤシキマワリは、どうしたことか「しんてつさ」の顔を見ると、ぴたっとそこから動けなくなっちまったんだとよ。「しんてつさ」は、なにやら口の中でブツブツと呪じ文もみたいなもんをつぶやいたあとで、どっこいしょと、蛇の頭を片手で握って持ち上げ、大きくふくらんだ蛇の腹をしごくように二回、三回とさすり上げると、驚くじゃあたという。「しんてつさ」は「わしの腹の中へ成じ仏ぶしろ」と大声で言ったかと思うと、なに食わぬ顔で大蛇をかついで、すたすたと小屋の方へ戻っていってしまったそうな。大蛇はどうなったかって……そんなこと、わしは見たわけじゃあないから、はっきりしたことは言えんが、おおかた焼くか煮るかして食っちまったんだろうなあ。とにかくそれからというものは、村のもんは、今までこじき坊主とばかにしていたくせに、あのお方はきっとお偉いお坊さまに違いない、あのようなお方にこんなあばら屋ではもったいないと言い合い、みんなで、その当時には珍しい瓦ぶきのお堂を建てて住んでもろたということだわさ。だが、そのお堂とかいうもんは、わしが子供のころでも、もう建ってはおらなんだがのう。ねえか、蛇の口から七つも八つも鶏の卵がコロンコロンと吐き出されてきた。遠巻きにしてかたずを飲んで見守っていた村の衆の中には、地べたにへたへたと座り込むもんがおっ一団の姿が、今日は三回も見られました。みな、そろいの白し装し束ぞに白はち巻き姿で、その白さのせいか、赤し銅ど色いの顔や手足にみなぎる若さが躍動しているように見られました。ながら白髪の老人で、鶴のようにやせた体をぴいんと伸ばし、彫りの深い顔の目は鋭く光っておりました。く声で叫びます。「サンゲ、サンゲ、六ろ根こ清し浄じ。」するとすぐさま、一列で後に続く若者たちの小高い丘から松林の間を縫ぬって進む異様なただ、その先頭を歩むのは、同じいでたち突然、その老先せ達だが、歩きながら、よく響第三十一話大 峯 参 り111110

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