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うげきんくけん ず城   ううき んっうい    りさつ刈か谷やだ。この阿久比と刈谷は、久ひ松まの殿様と先さ燈と籠ろ・四旗・天蓋・その後に仏様を立派ました。夢とは言え、どうしたものでござりましょうか……。」「はて、どうしたものかのう……。」そうだ、ここから三河でいちばん近いのは水野家のお大ださまが結ばれており、ご縁が深い。仏様がそうおっしゃるのなら、刈谷へお送りいたすことにしましょうかな。」作兵衛さんは、早速檀だ家かの人を全部集め、夢のお告げの話しました。村人たちはびっくりしましたが、「お名残り惜しいが、仕方のないことだ。」と、お送りする準備を始めました。な駕か籠ごにお乗せして出発しました。羽織はかま、紋付きの作兵衛さんと、緋ひの衣を着けた和尚さまを先頭に、長い行列が続きました。行列が阿久比から東浦へ入り、峠の頂あたりまで進んで行ったとき、なんとまあ、向こここは、伊勢の鈴す鹿か峠と。はるばる尾張草木の里から、丹た後ごの旧領へ帰っていく主君を送ってきた家老の池い田だ嘉か右え衛も門んをはじめ十数人の人々は、ほほをつたう涙をぬぐいもせず、ひざまずいて、主君一い色し千せ徳との顔を仰ぎ見るのでした。「……殿、お名残り惜しくは存じまするが、ここでお別れ申し上げまする。無事ご帰国のうえは、何とぞお心安らかに、お身を全うなされませ……。」「皆の者、よくぞはるばるこの遠地まで見うから、こちらの行列と全く同じのがやってくるではありませんか。止めました。問いかけます。「もしや、阿久比の雲谷寺の方々ではありませぬか。」「はい、そうですが……、どうしてお分かりですか。」「実は私どもの寺は刈谷の実じ相そ寺じと申します。先日ご本尊さまが私の夢枕に立たれて、〝阿久比の雲谷寺にわしの兄がおられるから、そこへ行きたい。〟とおっしゃるので、こうしてお連れしました。」りの不思議さにびっくりしました。そして、その場でご対面を済ませ、人々は乗り物を替えて帰りました。今も「阿弥陀替えの峯」と呼ぶ土地があります。とにかく、ここで待ちましょうと、行列をやがて、向こうの先頭の羽織はかまの人が作兵衛さんも自分の夢を語り、人々はあま第十三話竹  林  まぼろしの草木城5150

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