お塚さん斉さ明め天皇の4(六五八)年、坂さ部べ連む薬くが尾お張わがしかのろのおむつりちは、お姫さまをとっても敬い、大切にお守りしてきたそうだ……。ところが、その月宮姫さまが十八になられた年、ふとした病いがだんだん重くなり、こんな明月の夜だったそうなが、村人にみとられながら死んでしまわれた。もうみんな、宝「父上、どうしても大やと和にお帰りになるのですか……。」の国のこの地に流る罪ざとなってから、すでに五年のなかばが過ぎようとしていました。なだらかな丘すそに構えられた屋敷の中で、薬は、対座して、食い入るように見つめてくるわが子の顔から、そっと、穏やかな入江の青い反射へ目をそらせました。「……わしは、このごろ、この里が好きになってきた。できることなら、ここで平穏な一生を過ごしたい。……だが、あの皇太子、まだ即位はされていないが、すでに天皇になって蘇そ我が氏を倒して、大化の新しい政ま治ごを始めらじすりの玉を失ってしまったように悲しみ、泣く泣く今の東ひ新し畑ばという所に葬ほったそうなが、だれ言うとなく、そのお墓にお参りすると、姫さまのような美しい女の子になれるというてね、みんなが行くようになった。あんたもあした連れていってあげような……。」さまを見上げました。いる中な大お兄え皇お子じのご命令は、拒こむことはできぬ。……あのお方は、恐ろしいお方だ。られた皇み子こは、その後、将来障さりとなる者を、事を構えては、次々と葬り去ってこられた。た若い有あ間ま皇み子こも、悲しい歌を残して、多くの従者と共に、藤ふ白し坂さの露と消えられたが、なぜか、わしらだけは流罪にとどめられた。孫娘は、こくりとうなずいて、中天のお月皇太子の命めを受けた赤あ兄えの誘いに乗せられ い いいかのりまかじのり いか とわ9うのおば 8たんやめきとして、また、部落の支配者として、非常に尊敬されてきた。月つ宮み姫ひの伝説も、そうした女性の一人と考えられ、こうした伝承を持つ坂部の部落の発生は、相当古かったと思われる。土地の人はその墓を「お塚さん」と呼んでいる。巫み女こが神託の伝達者大昔の祖先は、自然の脅き威いを強く感じ、それを神として敬い、吉凶は神意と考えてきた。だから、神に仕える聖職者、特にょう第二話坂 部 連 薬─ 月宮姫塚 ─
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