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第124号(令和元年8月)海外地方行政調査 ドイツ編1

[2019年9月3日]

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執務中の町長

阿久比町長 竹内 啓二 

梅雨明け

皆さんこんにちは。

ようやく梅雨も明け、真夏の太陽の到来です。振り返ってみれば5月には雨が降らず愛知用水の水源である牧尾ダムの貯水率は30%となり、渇水を心配していたのですが、6月・7月は一転してぐずついた日ばかりでした。日照時間不足を心配する事態となってしまい、天候不順に悩まされた日々でした。さぞや農家の方はやきもきしたことだと思います。今後は台風が上陸しないことを願うばかりです。

さて今回は、一般財団法人全国自治協会による第55回海外地方行政調査に、全国町村会副会長としてドイツ連邦共和国とフランス共和国を訪ねた報告をします。

5月15日(晴れ)

本町で赤十字奉仕団の会議を終えてから、午後に出発しました。名古屋飯ともしばしの別れと思い、重いスーツケースを転がしながら新幹線のホームで立ち食いの店に寄り、花かつおが揺れるきしめんの醤油味を堪能してから愛知県を後にしました。東京の全国町村会館で視察団の方々と合流してからバスで成田へ向かい、明朝からのスケジュールや視察内容などの研修を受けたあとホテルで一泊しました。

5月16日(晴れ)

成田空港へ向かい、JAL407便でフランクフルトへ向けて所要時間12時間5分のフライトが始まりました。天にも昇る気持ちと言いますが、気持ちどころか体まで天に昇り、12時間も雲の上の人となることにちょっぴり不安を覚えました。機体が揺れるたびに気流や天候のことが気になり、シートベルトは外せませんでした。

そんな中、4人もの客室乗務員が入れ代わり立ち代わり声を掛けてくれました。嬉しかったのと、素晴らしいサービスだと感心していたのですが、どうも他の客よりも頻繁に私のところへ顔を出してくれるので不思議に思っていました。その謎は私の胸に着けていたピンバッジにあったようです。せっかくドイツとフランスへ行くのですから愛知県をPRしようと思い、愛知県豊山町で製造している国産初のジェット旅客機MRJのピンバッチをつけて参加したのですが、客室乗務員が私のことを航空関係者か社内の内部監査員と間違えていたようです。思いもかけないところで注目を浴びることになりましたが、私はピンバッジのおかげで客室乗務員とお話ができ、快適なフライトを過ごせました。


ピンバッジ

MRJのピンバッチ

フランクフルトに着陸し、80キロメートル離れた最初の訪問地ハイデルベルクを目指しました。初めて経験するドイツが誇る高速道路アウトバーンは速度無制限道路として有名ですが、区間によっては速度制限もあり、バスは時速100キロメートルまでとなっていたので少し残念でした。トラックなど大型車の車線変更制限区域もあり、自由にぶっと飛ばせる道路ではなさそうでしたが、一般車は時速120キロメートル以上でスムーズに走っているようでした。このアウトバーンが世界の高速道路のお手本になったことは間違いなく、設計には多くの観点から考察研究がされ事業化されたと伺いました。夕方ハイデルベルクの町はずれのホテルに到着しましたが、日没は夜9時頃なので夕食を食べている感覚が無く、体も時差ぼけを起こしているようでした。この日はアスパラ畑と森のイメージが強く、ホテルも小さかったので田舎に連れてこられたものだと思いつつベッドで横になりました。


5月17日(晴れ)

この日の視察目的は、環境への世界的な取り組みをしているパッシブハウスの研修と旧市街地の見学でした。ハイデルベルク市は

面積109㎢  (市街地30% 農地30% 森林30%)  

人口16万人  労働者人口12万人

学生と大学関係者が35%を占め、この町の最大の職場が大学であることが特色でした。

ハイデルベルク大学は1386年に設立されたドイツ最古の大学で、マックスウェーバーやノーベル賞受賞者11名を輩出した世界的にも権威のある大学で、理工系と医学系が進んでおり、ハイデルベルク城の麓にある旧市街地の中にあります。町全体が学園都市のようで、散策していても市街地なのか大学構内なのか分からないほど区分けがありません。一方で、国際的な観光ルートである古城街道の起点になっている観光地でもあり、古くからの建物を大切にしながらもお土産ショップが多くあり、観光客で賑わいを見せていました。

私たちはゆったりと流れるネッカー川沿いで下車し、石畳を歩いて市庁舎へ向かい、環境の取り組みとバーンシュタットについて環境保護・産業監督エネルギー局から説明を受けました。市民の環境保護への関心は高く、アンケート調査では市民の98%が環境保護に取り組むべきと回答し、ハイデルベルク市は2007年にドイツの環境首都となったそうです。


ハイデルベルク

小城から見下ろすハイデルベルク市

バーンシュタット・プロジェクトは2010年に始まり、2050年までにCO2を95%削減することを目標にしていると聞いて驚きました。

再生可能エネルギーの取り組みや、エネルギー効率化の施策の一つが「パッシブハウス」です。その省エネ設計基準は世界で一番厳しいもので、高断熱、高気密の材料や施工方法が求められます。市の公共施設は全て「パッシブハウス」で建設することが決められており、地域暖房は再生可能エネルギーの熱源でなければなりません。地域暖房について各ハウスへの供給方法を質問したところ、道路下に配管して各戸へ配給しているとのことでした。バーンシュタット地区はハイデルベルク中央駅に隣接しており、地下には上水管、下水管、地域暖房管、電線、電話線、光ファイバーなど多機能インフラの整備がなされていると思いました。現在建設中の2万立方メートルの給水塔は、単なる給水塔ではなく、ドイツ国内の発電所で余った電力を利用して、圧力をかけ115度の温度となった水の熱を蓄える施設で、夏は給湯、冬は地域暖房に使うために開発していると伺いました。この話で私は、地区全体が実験施設に感じられたのと、目標達成のために日々研究し実用化するドイツ人気質に感服しました。だからこそヨーロッパをリードする国になったのだ思います。自動車生産王国でありながら、「CO2を出さない車を完成できなければ、自動車を使わない移動手段を考えていく」との発言に、この取り組みへの覚悟がうかがい知れましたが、同時に私たち日本人の環境への取り組みの甘さを恥じた次第です。

バーンシュタット地区において一番大切な目標は、低エネルギーの建物を建てることであり、研究の結果パッシブハウス様式が環境的にも経済的にも最適であったので採用され、この地区の建物は全てパッシブハウスで建設されていました。また、環境に優しい生活を送ることを生活全般にわたり目指しており、再生可能エネルギーを使い、効率の良いエネルギーの使い方における技術面での課題を研究実用化させながら、まちづくりを進めていました。例えば地域交通では、市民の78%が環境に優しい手段を用い、38%が徒歩、26%が自転車で移動しており、14%が利用する公共交通は、電気バスや水素バスを導入していました。

驚きつつも感心したのは、市民が確固としたまちづくりの信念を持っており、その実現に向かって進んでいることです。価値観が多様化した現代社会では、しっかりとした方向性を示しにくいと感じていた私は、ハイデルベルクがいかにして市民の意見を集約し取りまとめることができたのかに大変興味がわき、同時に「今の日本人ではどうであろうか」という問いかけが頭の中を通り過ぎていきました。

古き街の良きところは守って国内外の観光客を集客しながら、地球環境を守ることでは世界をリードする斬新なまちづくりを進めるハイデルベルクのまちづくりには、見習うところが多くありました。最後に課題としてパッシブハウスの建設費が非常に高いことを記しておきます。

私

パッシブハウスの前で質問する私

ホテルまで帰る車窓から見える、イチゴを摘んでいる10数人ののどかで牧歌的な光景が、ミレーの「落穂ひろい」を思い出させました。陽光や空気感がまさにミレーの作品であり、ヨーロッパに来ていることを実感しました。西洋画は西洋で、水墨画は東洋の地でと、作品の生まれたところで鑑賞してこそ本当の作品の良さが感じ取れるのではないかと思った次第です。

5月18日(曇りのち小雨)

グリーンツーリズムと6次産業の取り組みについて学ぶために、ハイルブロン郡グンデルスハイム市を訪れました。ハイデルベルクから80キロメートル東に位置し、人口は7400人の小さなまちです。この郊外の丘陵地にある「シェーファーズ農家レストラン」を視察するのが目的でした。家族経営をしている農家で、この農場で農畜産業を主とし、ウインナー、ハム、チーズなどの畜産加工品の製造販売、レストラン、宿泊ホテル、結婚式場、イベント企画など手広く展開し、6次産業化のお手本となる農家でした。

これだけの事業を家族を中心に行っており、観光地でもない農村の丘陵地に自らの土地と借りた牧草地を構え、牛や羊、馬が放牧され自家製ワインのためのブドウ畑もあります。かなりの面積で(見学はトラクターでけん引する幌馬車で移動するほどの広さでした。)「これだけの施設を構えて経営が成り立つのか」と質問したところ、家族連れの来場者が多く都会から車できてファームステイを楽しんで帰るそうで、経営は心配ないとのことでした。息子さんは調理師免許を取得中で今後レストラン経営にも力を入れていくとのことでした。

農場

シェーファーズ農場

牛

農場で放牧される牛たち

農園を散策する老夫婦や、子どもを牛などと遊ばせてグリーンツーリズムを楽しんでいる家族を見かけました。日本ではまだなじみの少ないファームステイですが、ドイツにはこのような施設が約16000カ所もあるそうで、休暇を森や農場など自然の中に求めるグリーンツーリズムで過ごす「自然回帰」の人々が増えてきているそうです。昨日見学した環境に優しいまちづくりの試みも、こうした住民の意識の表れかもしれません。自然のままの食材を地産地消し、幼いうちから食材がどうしてつくられているのかを、体験させながら教える子育てに共感を覚えました。ガイドによれば、ドイツではジビエの料理をごちそうすることが最高のおもてなしだそうです。ネッカー川にカヌーを浮かべて釣りをしたり両岸の緑を楽しんだり、森を散策したりするドイツ人の生活を見ていると、「森住み人」のイメージが強く焼き付いてしまいました。そして自分たちの生活を守るために自然を大切にする強い意志を感じ取りました。

「保護された自然の真ん中にある素晴らしいロケーションと素晴らしい景色は、日常生活からあなたを開放する」というこの施設のキャッチコピーは、私たちに休暇の過ごし方の中から「自然との共生の大切さ」を思い起こさせるものでした。

ハイデルベルク古城のある旧市街地に戻り夕食となりましたが、この日が私の65歳の誕生日であることを知っていた方から御発声があり、ワインで皆さんに祝福をしていただき恐縮してしまいした。生まれて初めて誕生日を海外で迎えたことは、一生の思い出となりました。今夜の夢の中に、誕生日を祝福してくれる家族の顔が出てくることを期待しながら眠りにつきましたが、この年にしてホームシックにかかったのでしょうかzzzzz

(次回に続く)


集合

農場経営者(中央)と視察団の皆さん

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